マイホーム計画で運命を分けるポイント、それはハウスメーカー選びです。
しかし、ハウスメーカーの数は多く、有名大手だけでもかなりの数になります。
どのハウスメーカーを調べても公式サイトやカタログでは性能もデザインも良さそうで…。結局どこにすればいいの?
同じように悩む方は多いでしょう。営業所に行けば、
うちは耐震等級3で断熱性能も最高ランクですよ
と、どこのメーカーに言っても営業さんは自信たっぷりです。
大手メーカーの性能は数値上はほぼ横並びで、営業マンは自社の商品を売るのが仕事ですから当然です。
これでは私たちは「平等」な比較ができません。
そこで今回は、どのハウスメーカーにも属さない「平等」な比較をできるプロの評価を紹介します。
ホームインスペクターをしている市村氏著の「建てる前に読む!絶対にしくじらないハウスメーカー選び 大手11社徹底解剖! [ 市村博 ]」という本で、各ハウスメーカーの本当のところを赤裸々に語っていましたので、その性能評価(5段階)も含めて紹介していきます。
大和ハウスをプロが口コミ評価
まずは、大和ハウスです。鉄骨造メーカーとして歴史が長く、ダイワマンなどユニークなCMでも有名な会社です。
大和ハウス|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 3 |
断熱性能 | 3 |
気密性 | 2 |
耐火性 | 3 |
遮音性 | 3 |
耐久性 | 4 |
設計自由度 | 3 |
施工力 | 2 |
アフター | 3 |
総合 | 3 |
- 鉄骨造の競合3社「積水ハウス」「ヘーベルハウス」「パナソニックホームズ」と比べて、これといった特徴がない
- ジーヴォシグマの天井高2.7mを売りにしているが、実は積水ハウスも可能
- 天井の断熱に難あり。そもそもの設計に無理があるから、職人さんも無理やり断熱材を押し込むしかなく、そうなれば断熱材の効果は薄れる
- 鉄骨造の弱点は「サビ」だが、鉄骨をクレーンで積み上げる際に鉄骨同士がほぼ確実にぶつかり傷がつく。その補修をしっかりしているかのチェックは必須で、これができていないとサビ、劣化の原因になる
- ダイワハウスの床は2種類で、標準は「木質パネル」オプションで「ALC板」だが、遮音性を高めるなら後者を選択すべき
- 鉄骨造メーカーは、だいたい2階建てまでは「軽量鉄骨」で3階以上は「重量鉄骨」にするが、大和ハウスは3階でも軽量鉄骨のプラン見積もりを出してくるので、3階建て鉄骨造で他社比較するとかなり安い
- 軽量鉄骨の3階建てでも個人的にはぜんぜん大丈夫だと思うが、地震の揺れや大間口のプランなどで劣る。重量鉄骨のプランも可能だが、一気に値段が上がる
- 4大鉄骨造メーカーの中で、鉄骨の外側で断熱処理をしているのはヘーベルハウスだけ。大和も含め「外張り断熱」を謳ってはいますが、肝心の柱まわりの断熱材が薄いので期待通りの効果は望めず、へーベルとは違うので注意。
- 木造住宅は2回ぐらいインスペクションしましたが最悪ですね
- ダイワハウスの耐火建築物は、構造を軽量鉄骨+外壁をサイディングの組み合わせで提案するケースが多いため、他社比較で安い。しかし、基本性能を見比べることも忘れずに。
ヘーベルハウスをプロが口コミ評価
次に、同じ鉄骨造のヘーベルハウスの評価です。旭化成ホームズ「都会の3階建ては、ヘーベルハウス」というCMで有名です。
ヘーベルハウス|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 5 |
断熱性能 | 4 |
気密性 | 2 |
耐火性 | 5 |
遮音性 | 5 |
耐久性 | 5 |
設計自由度 | 3 |
施工力 | 5 |
アフター | 5 |
総合 | 5 |
- 2階建てまでは基本「軽量鉄骨造」、3階以上で「重量鉄骨造」、さらに自社のALC板(断熱性・耐火性・気密性に優れた軽量気泡コンクリート)「ヘーベル」が売りで、ヘーベリアンというファンもいるほど
- 栃木県鬼怒川の水害で一軒だけ流されずに残った映像のインパクトが大きい
- 「軽量鉄骨造」は木造よりも軽くて柔らかいので地震の時に揺れやすいので「制震装置(サイレス)」は必要、
- 「重量鉄骨造」は柱と梁だけで構成するラーメン構造でプランによって制震フレームも検討
- 鉄骨造メーカーでネックになるのが断熱。ただでさえ断熱をしなくてはならない「鉄」の柱、この部分の断熱材の施工が困難。そんな中、いち早く外断熱システムを開発。ただし、外断熱は壁が厚くなるので部屋が狭くなる
- 最小モジュール305mmの倍数、「斜め」や「角にR」などもできず、設計の自由度はかなり不利
- アフターサービスは動きも、点検も大手メーカーでは一番いい印象
パナソニックホームズ(パナホーム)をプロが口コミ評価
同じく鉄骨造のパナソニックホームズです。こちらは9階建てまでの多層階建築をウリにしているメーカーで、自宅と賃貸収益物件も可能です。
パナソニックホームズ(パナホーム)|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 3 |
断熱性能 | 3 |
気密性 | 2 |
耐火性 | 4 |
遮音性 | 3 |
耐久性 | 3 |
設計自由度 | 4 |
施工力 | 2 |
アフター | 3 |
総合 | 3 |
- 3階建て以上、9階建てまでの高層階に対応(ビューノ)し、高層建築としてはほぼ独壇場。賃貸収益物件などで人気
- 15センチ刻みで間取りが作れる設計自由度の高さが売り
- 設計の自由度が高い分、各図面の突き合わせチェックをしていないと図面相互の整合性にミスがでやすい
- 鉄骨造は施工ミスが起きにくいが、組み立て工レベルの職人しかいないハウスメーカーに9層の重量鉄骨を精度よく積み上げていけるかは疑問
- 「無足場施工」で、敷地いっぱいに施工可能なことを売りにしているが、経年劣化による屋根や外壁のメンテナンス時には、足場は必要になる。本当に敷地いっぱいに建てた場合、お隣さんの土地に足場を組む許可を得られれば良いが…
積水ハウスをプロが口コミ評価
次は積水ハウスです。こちらは業界最大手であり、工法も「鉄骨造」と「木造」に対応します。
積水ハウス|ホームインスペクター評価 | ||
鉄骨 | 木造 | |
耐震性能 | 4 | 3 |
断熱性能 | 3 | 4 |
気密性 | 2 | 4 |
耐火性 | 5 | 3 |
遮音性 | 3 | 3 |
耐久性 | 5 | 3 |
設計自由度 | 4 | 5 |
施工力 | 4 | 4 |
アフター | 4 | 4 |
総合 | 4 | 4 |
- 最大手(住宅着工棟数)による、安定感、保証、アフターケアへの安心感
- 自社100%施工(子会社)なので、現場の声を吸い上げる力があるしトータルな施工力も高い
- シャーウッド含め、家自体にすごい特徴があるかというと微妙。普通感、保守的な印象がある意味で安心感につながっている
- 外壁材が気に入って決める人も多い
- 「スローリビング」など、雰囲気づくりをする宣伝広告がうまい
住友林業をプロが口コミ評価
次は、泣く子も黙る住友林業です。坪単価は他社比較でも高いですが、その住宅性能をホームインスペクターはどう評価するのでしょうか?
住友林業|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 3 |
断熱性能 | 4 |
気密性 | 4 |
耐火性 | 3 |
遮音性 | 4 |
耐久性 | 3 |
設計自由度 | 5 |
施工力 | 3 |
アフター | 3 |
総合 | 4 |
- 自社で山林を所有しているので、木造といったら住友林業という印象が強いが、よく見れば集成材の木造の家なので、工務店レベルでも十分にできる建築
- 「木の匂いがする家」というキャッチに惹かれる人が多いが、実際に木の匂いがする家を建てようとすると標準仕様ではない
- 型式認定工法「ビックフレーム構法」は、集成材を使って柱や梁を断面寸法を太く大きくして、柱と柱の間隔を広く取れるようにしたもの(最大間口5.4m)。これを売りにしているが、あくまで従来の在来工法と比較すればという話。例えば三井ホームの2×4ラーメンの門型フレームは最大7.3m。さらに積水ハウスの重量鉄骨は9mくらいまで可能。
- 下から上まで通し柱を立てて、梁をかけていく普通のラーメン構造に対して、住友林業は「梁勝ちラーメン構造」で、梁を横に通してその間に柱を通していく仕組み。これにより上下階の柱の位置に影響されず間取り設計ができるため自由度は上がる。一方、上下階の柱の位置が違うということは、地震の際にモーメント力(曲げる力)がかかるので安全面でのマイナスもゼロではない。
- 気になるのは「ビックフレーム構法」は最大56cmの太い柱2本で家を支えるような考え方なので、結合部分は4カ所。その4カ所に力を集中させるため、もしも1ヶ所に不備があると支える力は75%になってしまう。
- さらに、門型フレームは梁成(梁の高さ)を高くしますから、短柱化(柱を短くする)を招き、バランスよく構造計算しないと柱が折れてしまう危険性も
三井ホームをプロが口コミ評価
続いては2×4、2×6工法、いわゆる「ツーバイ」の最高峰とも言える三井ホームです。
三井ホーム|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 5 |
断熱性能 | 5 |
気密性 | 5 |
耐火性 | 3 |
遮音性 | 4 |
耐久性 | 4 |
設計自由度 | 4 |
施工力 | 3 |
アフター | 4 |
総合 | 5 |
- 2×4工法の3大メーカーの一つで、「三菱地所ホーム」「住友不動産」と競合するが、三井ホームは2×6で壁が分厚い、三菱地所ホームは2×4が標準、住友不動産は構造用合板が針葉樹ではなく複合合板なので、基本性能で三井ホームに軍配が上がる
- 施工に関しても、三井ホームは自社施工と工務店発注なのに対して、他2社は全て工務店発注なので、施工レベルのばらつきでも三井ホームが優位
- もちろん3社では一番値段が高い
- 三井ホーム、三菱地所ホームは全館空調が得意という特徴もあるが、三井ホームの全館空調はダクトが蛇腹になっていてフレキシブルに曲がるので施工しやすくミスが少ない
- 三井ホームはインスペクションをして断熱性能の高さを実感できる。屋根の断熱には「ダブルシールドパネル」という、板で断熱材をサンドウィッチした構造用パネル1枚で屋根を作るので隙間がなく断熱性が高い。小屋裏も暑くなく、明らかに他社とは違う
- 実際に家を建てた方のアフターサポートの評価が高い・対応が早い
三菱地所ホームをプロが口コミ評価
次は、2×4工法と全館空調エアロテックを武器に戦う三菱地所ホームです。
三菱地所ホーム|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 2 |
断熱性能 | 3 |
気密性 | 4 |
耐火性 | 2 |
遮音性 | 2 |
耐久性 | 3 |
設計自由度 | 4 |
施工力 | 2 |
アフター | 2 |
総合 | 3 |
- 2×4工法の3大メーカーの一つで、「三井ホーム」「住友不動産」と競合するが、三井ホームは2×6で壁が分厚い、三菱地所ホームは2×4が標準、住友不動産は構造用合板が針葉樹ではなく複合合板なので、基本性能で三井ホームに軍配が上がる
- 施工に関しても、三井ホームは自社施工と工務店発注なのに対して、他2社は全て工務店発注。施工レベルのばらつきでも三井ホームが優位だがコストが高いので予算と相談
- 三菱地所に限らず「ツーバイネクスト構法」など、横文字で謳っているとなんだかすごそうなイメージを持つが、根本は2×4の考え方
- ハウスメーカーの中で一番最初に全館空調を取り入れたのがこの三菱地所で「エアロテック」が有名。ただ、ダクトの施工が困難で職人の腕が試される
- 全館空調で「部屋ごと個別に温度設定ができる」が売りだが、そもそも部屋ごとの温度設定をなくすという全館空調の目的からずれていっている印象
- 事業縮小傾向にあるのでアフターサービスに不安がある
- 引き渡しが決算期集中型なのでこの時期の現場には応援の職人が来たりとバタバタする。決算期を避けるタイミングで依頼すべき
住友不動産をプロが口コミ評価
次は、同じく2×4工法ですが、できるかぎりローコストで叶えたい方の味方、住友不動産です。それでいてデザインなど高級感漂う雰囲気など見せ方が上手。
住友不動産|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 2 |
断熱性能 | 3 |
気密性 | 4 |
耐火性 | 2 |
遮音性 | 2 |
耐久性 | 2 |
設計自由度 | 3 |
施工力 | 1 |
アフター | 2 |
総合 | 3 |
→住友不動産を詳しくチェック
一条工務店をプロが口コミ評価
次に一条工務店です。同じくパネル工法ですが、こちらはなんと工場で外壁まで一緒にしたパネルを使用します。全館床暖房でも知られる会社で、工務店と名前が付いていますが、あくまでハウスメーカーです。
一条工務店|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 2 |
断熱性能 | 3 |
気密性 | 4 |
耐火性 | 2 |
遮音性 | 2 |
耐久性 | 2 |
設計自由度 | 4 |
施工力 | 1 |
アフター | 2 |
総合 | 3 |
- 金額も安めでけっこう売れている印象。特に千葉のニュータウンあたり。建築条件つきで土地とハウスメーカーをセットにする方法がある。元々は静岡県浜松市から全国展開、塩ビのサッシをいち早く採用して東北で人気に。
- 在来工法の中に木質パネル工法の壁を取り入れたような「複合パネル」を採用。断熱材を入れて、外にタイルまで貼ったパネルなので、取り扱い・品質管理がむずかしい。パネルはフィリピンで作られ、コンテナで運ばれてくる。
- 特に、1階と2階の間を緊結させるのに防水紙を重ねていく現場作業で雨養生がちゃんとできているかが大事。というのも、断熱材に雨が入ってしまうと、本来は徹底的に乾燥させないとカビや腐食の問題がでてくるけれど、外にタイルが貼ってあるから出せず、乾燥させづらいから困りもの。
- 断熱性能を図る基準の一つ、気密性の高さをC値で公式サイトに公表、窓はトリプルガラスなど高断熱・高気密に取り組んだり、耐震に注目が集まると「免震」にいち早く目をつけるなどアイデアマンという印象
- 最近は2×4にシフトチェンジしていっている
セキスイハイムをプロが口コミ評価
最後はセキスイハイムです。こちらはユニット工法といい、なんと工場で部屋まで作り上げてしまい、それを現場で組み立てます。パネル工法どころか、究極の建築スタイルとも言えます。
セキスイハイム|ホームインスペクター評価 | |
耐震性能 | 3 |
断熱性能 | 2 |
気密性 | 3 |
耐火性 | 4 |
遮音性 | 3 |
耐久性 | 4 |
設計自由度 | 2 |
施工力 | 3 |
アフター | 3 |
総合 | 4 |
- プレハブ・鉄骨ユニット工法、つまり工場で外壁から内装までほぼ完成した箱型ユニットを運んできて家の形に組み立てていく仕組み
- 工場で作るから品質が安定する安心感がポイント
- かなり特殊な工法なのでセキスイハイムで決めている人はほぼ一択。競合はトヨタホームくらい。
- ユニット工法にこだわらず、鉄骨造なら他でもと検討している場合、鉄骨メーカーに相談にいくと大体はそっちに流れる。セキスイハイムは比較すると間取りの自由度がなさすぎるから。
- 間取りの自由度に限りがあるから、あまり悩みたくない人にはおすすめ。そのかわり内部造作には時間がかかる
- 出来上がった家を買う感覚だから、契約しないと話が進まないため契約先行型
- 工場で作ってくるから、工期が短いというメリットがあるが、着工まで時間がかかるし、基礎でも一ヶ月くらいはかかるので、60日くらい。最近は他社も工期を短くしてきているのでメリットとしては微妙なライン
ハウスメーカーを上手に比較する方法
ここまでハウスメーカーのプロ評価を紹介してまいりました。
ポイントは、数値上の性能は同じでもインスペクションすると性能・評価が全く違うということです。
なぜこんなことが起こるのかというと、
- 大工の施工レベル・育成度
- 施工しやすさ・施工ミスしにくい商品開発
の2点で差が生じるからです。
今回のホームインスペクターの評価を元に、気になるハウスメーカーのモデルハウスや施工現場をもう一度チェックしてみると新しい発見があるでしょう。さらに「タウンライフ」などを活用し、価格や特徴の比較をするとより効果的です。
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