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借地権の売却を地主が承諾しないときは?交渉・借地非訟・介入権を宅建士が解説

「借地権付きの実家を売りたいのに、地主から断られた」「承諾料を提示されたけれど、金額が合わない」。こんなときは、値下げや買主探しを続ける前に、地主が何に反対しているのか確かめておきたいところです。

土地賃借権の譲渡を地主が承諾しなくても、売却を検討する方法は残っています。ただし、承諾を得ずに譲渡を完了してよいわけではなく、裁判所に申し立てれば必ず希望する買主へ売れるわけでもありません。

まずは地主への再交渉で何を確かめるべきか整理しましょう。話し合いで解決しない場合に検討する借地借家法19条の手続きや、地主の介入権、申立ての資料と費用についても説明します。

地主に借地権の売却を断られたら、まず「何を拒否されたか」を確認

地主に借地権の売却を断られたら、まず「何を拒否されたか」を確認

「売却は認めない」という一言だけでは、買主を変えればよいのか、金銭条件を話し合うのか、法律上の手続きを考えるのか判断できません。できれば不動産会社を通じて、地主の返答と提示条件を記録に残しましょう。

地主の返答・状況 先に確認すること 次の対応
この買主には貸せない 地代の支払能力、利用方法、個人・法人の別 買主の情報と契約条件を整理して再相談
建て替えは認められない 譲渡自体への反対か、増改築や構造変更への反対か 譲渡と建て替えの条件を別々に協議
承諾料で合意できない 請求額の根拠、負担する人、支払時期 地代改定等と分けて金額を協議
第三者へは売ってほしくない 地主自身に買う意思、底地も売る意思があるか 地主への売却・同時売却も検討
具体的な買主にも承諾しない 契約・交渉経緯、買主に関する事情 弁護士へ借地非訟の要件を相談

反対の理由が「買主」なのか「金額」なのか「建物の利用方法」なのかを切り分けると、何について話し合えばよいのか見えてきます。

土地賃借権と地上権は、譲渡承諾の扱いが違う

住宅の借地で多い土地賃借権を第三者へ譲渡する場合、民法612条により地主の承諾が原則必要です。地主から見れば、地代を支払い土地を使う相手が変わります。一方、地上権は原則として譲渡時の地主承諾を必要としません。契約書と土地・建物の登記事項証明書で、権利の種類を確かめましょう。

地上権と賃借権の違いや、地上権の譲渡・登記について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

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HOMEくん
HOMEくん
自分の家を売るだけなのに、どうして地主さんの承諾まで必要なのかと思っていました。
先生
先生
地主さんから見ると「土地を貸す相手」が変わります。借地権の売却では、売主と買主だけでなく地主さんとの条件整理も必要になるんです。

買主への不安・建て替え・承諾料は別々に交渉する

買主への不安・建て替え・承諾料は別々に交渉する 借地権

買主が地代を払えるか心配されている場合

地主が新しい借地人の支払能力や利用方法を心配しているなら、買主候補の同意を得て、購入後の利用目的や地代をどう引き継ぐかを整理して伝えます。買主の個人情報を必要以上に渡すのではなく、地主が判断するために必要な内容を、不動産会社と相談してまとめましょう。

譲渡はよくても、買主の建て替えに反対している場合

借地上の建物を購入したい人が、購入後すぐ建て替えたい場合もあります。地主が拒否しているのは、土地賃借権の譲渡ではなく建物の構造や増改築条件かもしれません。譲渡承諾と、建て替え・借地条件変更の承諾は別の問題です。買主の計画図や用途を確かめ、どの承諾が必要かを分けて協議しましょう。

借地上の建物を建て替える際の契約・承諾・再建築・費用については、こちらをご覧ください。

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「承諾料10%」と言われた場合

譲渡承諾料は名義書換料と呼ばれることもありますが、「借地権価格の10%」が全国一律の法定料金というわけではありません。例えば売却価格2,000万円の10%なら200万円ですが、これは計算例であり、200万円を払えば地主に承諾義務が生じるという意味ではありません。

  • 金額は借地権価格・更地価格のどちらを基にしているか
  • 承諾料は売主・買主のどちらが負担し、いつ払うか
  • 売買が成立しなかった場合、支払った金銭をどう扱うか
  • 新しい地代や更新条件、増改築条件への合意も求められているか

金額に折り合いがついても、地主が買主や利用方法に反対しているなら話が進まない場合があります。請求額だけでなく、何について承諾してもらえるのかも書面に残しましょう。

HOMEくん
HOMEくん
承諾料を10%払えば、地主さんは必ず売却を認めてくれるんですか?
先生
先生
そうとは限りません。10%はあくまで目安ですし、地主さんが買主や建て替えを心配しているなら、お金だけでは解決しないこともあります。

地主が第三者への売却を望まない場合の選択肢

地主が第三者への売却を望まない場合の選択肢

地主自身に借地権付き建物を買ってもらう

地主が新しい借地人を迎えたくないのであれば、地主自身に建物と借地権を買う意思があるか尋ねる方法があります。ただし、通常の任意売却で地主に買取りを求めても、当然に買い取る義務が生じるわけではありません。売買代金と建物の引渡し条件に双方が合意する必要があります。

地主と底地・借地権をまとめて売る

地主も土地を手放す考えなら、地主が持つ底地と借地人の借地権・建物を同じ買主へ売る方法もあります。売却代金の配分と費用、決済日について、地主と借地人の双方で合意が必要です。地主に底地を売る意思がないなら、この方法は使えません。

地主との協議を含めて買主探しや専門買取を比較するなら、買取会社がどこまで対応し、どの条件で価格を提示するかも見ておきましょう。

借地権の買取業者はどう選ぶ?査定・地主の承諾・契約条件と手取りを解説
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なお、買取会社が買主になる場合も、土地賃借権の第三者への譲渡には地主の承諾が原則必要です。「専門会社に売れば承諾の問題がなくなる」とは考えず、誰が地主と話し、不承諾の場合にどうするかまで確かめておきましょう。

話し合いで解決しない場合の借地非訟|借地借家法19条

話し合いで解決しない場合の借地非訟|借地借家法19条

地主から承諾を得られなくても、借地借家法19条の要件を満たす場合、借地人は裁判所に土地賃借権の譲渡について地主の承諾に代わる許可を申し立てることができます。これが借地非訟の一つである「土地の賃借権譲渡又は転貸の許可」です。

法律が想定するのは、借地上の建物を第三者へ譲渡しようとする際、その第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに、地主が承諾しない場合です。地主に断られたというだけで、自動的に許可が出る制度ではありません。

裁判所が考慮する事情 事前に整理したい資料
賃借権の残存期間 当初契約書・更新書類・満了日
従来の借地関係 地代の支払履歴、過去の承諾や協議の経緯
譲渡が必要な事情 転居、相続後の空き家、資金事情など、売却を考えた理由
譲受予定者 買主の情報、取得後の利用方法と契約条件
地主が反対する理由 承諾を求めた日時、回答、提示額、争いになっている条件

許可の際には、裁判所が借地条件の変更を命じたり、財産上の給付を条件としたりする場合があります。裁判所へ申し立てる費用と、許可の条件として命じられる金銭は別です。

参考:e-Gov法令検索「借地借家法」19条/東京地方裁判所「借地非訟とは」

買主が未定のまま「誰にでも売れる許可」を求められる?

19条の許可は、第三者が賃借権を取得しても地主に不利とならないかを判断する制度です。そのため、譲受予定者と取引内容を具体化してから相談するのが基本です。買主候補を探すこと自体が直ちに禁止されるわけではありませんが、承諾や必要な許可を得ないまま譲渡を完了しないようにしましょう。

「建物の代金を払ってから2か月」は競売・公売の場合

インターネットで見かける「代金を支払ってから2か月以内」という申立期限は、競売・公売で建物を取得した人が使う借地借家法20条の説明です。通常の任意売却で借地人が申し立てる19条の手続きと混同しないようにしましょう。

借地非訟を申し立てるには?裁判所・書類・費用を確認

借地非訟を申し立てるには?裁判所・書類・費用を確認

申立先は原則として借地の所在地を管轄する地方裁判所です。当事者の合意があるときは簡易裁判所に申し立てられる場合もあります。弁護士に依頼する場合は、裁判所への提出書類や審理への対応も含めて相談しましょう。

借地契約・土地建物・交渉の記録を集める

東京地方裁判所では、土地賃借権譲渡・土地転貸許可申立書の書式例と、申立てに必要な資料を案内しています。個々の事案や申立先によって変わりますが、相談前に次の資料をそろえると状況を説明しやすくなります。

  • 借地契約書・更新書類・地代の支払履歴
  • 土地・建物の登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 予定する買主と売却条件、購入後の利用予定が分かる資料
  • 地主に承諾を求めた記録と、拒否・条件提示の経緯
  • 承諾料、地代や建て替え条件について交わした書類

申立費用と弁護士費用は別に見積もる

裁判所へ納める申立手数料は、借地の土地価格を基に算定され、固定資産評価額などが資料になります。書類送付のための郵便費用も必要です。弁護士へ依頼する場合の相談料・着手金・報酬・実費は別途確かめておきましょう。

「借地非訟の費用は一律○万円」とは決められません。申立費用、弁護士費用、許可条件として支払う可能性のある金銭を区別し、売却代金から差し引いた手取りも試算しましょう。

参考:東京地方裁判所「借地非訟事件手続の流れ」/同「費用」/同「書式例」

地主の「介入権」が行使されると、予定した買主に売れない場合がある

地主の「介入権」が行使されると、予定した買主に売れない場合がある 借地権

借地非訟で許可さえ出れば、最初に見つけた第三者へ売れるとは限りません。借地借家法19条3項には、地主が借地上の建物と土地賃借権を自ら譲り受ける申立てをする制度があります。これが一般に「介入権」と呼ばれます。

地主が裁判所の定める期間内に申立てをすると、原則として地主が裁判所の定める価格で買い受ける展開になります。これは、地主と任意に売買価格を相談して買ってもらう方法とは別の制度です。

「地主に売るつもりはないから借地非訟で別の人へ売る」と考えていても、地主が介入権を行使する可能性があります。売却先・価格・売却までの期間について、申立て前に弁護士と相談しておきましょう。

HOMEくん
HOMEくん
裁判所に申し立てれば、最初に見つけた買主へ必ず売れるわけではないんですね。
先生
先生
そうです。地主さんの介入権があるため、借地非訟を選ぶときは「誰に売るか」だけでなく「地主さんが買い取る場合」も考えておきましょう。

承諾前に売買契約を進める場合の注意

買主候補を探すことと、地主の承諾なしで土地賃借権を移すことは別です。民法612条は、無断で賃借権を譲渡・転貸し第三者に使用・収益させた場合の解除を定めています。解除の可否は個別事情によりますが、承諾・必要な許可を飛ばして名義や利用者を移すのは避けてください。

先に売買契約を結ぶなら、地主承諾または必要な裁判所許可が得られなかった場合の扱い、期限、手付金や費用の精算を、借地権を扱う不動産会社・弁護士と文書で確かめましょう。買主の住宅ローンに必要な地主の書類も、譲渡承諾とは分けて確認します。

地主と話がまとまらないときの相談先と売却価格の考え方

地主と話がまとまらないときの相談先と売却価格の考え方 借地権

解決したいこと 相談先
承諾拒否の法的な理由、借地非訟、明渡しの通知 借地問題を扱う弁護士
現在の借地権付き建物の査定、仲介や買主探し 借地権の取引経験がある不動産会社
地主との調整を含めた直接買取の条件 借地・底地を扱う買取会社
売却で生じる税金 税理士

査定で示された金額から、承諾に伴う金銭や売却までの地代・管理費がいくらかかるかも見ておきましょう。「いくらで売れる見込みか」だけでなく「いつ、いくら手元に残るか」が、売却先を比べるうえで大切です。

借地権割合や相続税評価額と実際の売却価格の違い、仲介査定と買取提示の比べ方はこちらをご覧ください。

借地権の査定・売却相場はいくら?借地権割合との違いと手取りの比較方法
借地権割合70%なら更地価格の70%で売れる?相続税評価額と売却相場の違い、査定額を左右する7つの条件、仲介と直接買取の比較、地主の承諾料を含む手取りの計算方法を宅建士・FP視点で解説します。

地主との調整を含めて借地権・底地を扱う会社に相談するなら、現在の契約書、買主の有無、断られた内容を伝えておきましょう。不動産会社への売却相談と、弁護士による法的手続きの代理は別です。

借地・底地や古家などの買取査定を比較する

地主との協議が難しい場合も、借地・底地などを扱う会社へ現況と売却条件を伝え、買取価格の見込みを聞く方法があります。ただし、査定ができることと、承諾なしに売買を完了できることは別です。

【ワケガイ】

提示された条件を見て、売主が負担する費用や決済までの期間も比べておきましょう。

首都圏の借地権について、地主との協議から相談する

東京・神奈川・埼玉・千葉の借地権で、地主への連絡や売却の進め方に迷っている方は、借地権を扱う不動産会社へ契約内容を伝えて相談する方法もあります。地主との関係が悪化し、法的な対応が必要な場合は弁護士にも相談しましょう。

【借地権 無料相談ドットコム】

まとめ|「地主に断られた理由」と「必要な承諾」を分けて確認

「地主に断られた理由」と「必要な承諾」を分けて確認

地主が第三者への売却を承諾しないときは、買主への不安、建て替え・利用方法、譲渡承諾料のどこに問題があるのか整理しましょう。地主本人への売却や底地との同時売却も、双方の希望が合えば検討できます。

それでも土地賃借権の譲渡が認められない場合は、具体的な買主候補と借地契約、地主との協議記録を持って弁護士へ相談しましょう。借地借家法19条の許可には個別の要件があり、地主の介入権もあります。

承諾なしで売却を完了するのではなく、拒否の理由・条件・手続きの順に確かめる。それが、買主との契約や手取りの見通しを立てるための出発点です。

※本記事は一般的な不動産・法律情報です。借地非訟、解除・明渡しなどの判断は、借地契約と個別事情を踏まえて弁護士へ確認してください。

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この記事を書いた人

名前:早坂

プロフィール:不動産のプロである現役の宅地建物取引士(令和6年11月26日合格・令和7年5月7日宅地建物取引士資格登録あり)。また

  • マンション管理業協会 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 国家資格ファイナンシャル・プランニング技能士2級
  • ファイナンシャル・プランニング(資産設計提案業務・生保顧客資産相談業務)
  • 日本商工会議所主催 簿記検定2級

など、その他の不動産に関連する国家資格も多数保有するだけでなく、FPや簿記などお金や企業経営、財務分析の知識も活用しながら、わかりやすく、公平かつ正確な情報の提供に努めています。

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