近年の発生が想定される「大震災」、威力を増す「台風」やゲリラ豪雨による「水害」「土砂災害」などの被害。
さらには2020年、日本を震撼させる新型コロナウイルスによる「自宅待機要請」など、マイホームの役割は日々の暮らしの快適さだけでなく、非常時の安全・安心も重要視される時代です。
ということで今回は、フェーズフリー住宅について紹介してまいります。
マイホーム購入計画中の方、これから間取り決めをするという方は是非チェックをしていただきたいポイントです。最後までお付き合いください。
フェーズフリー住宅とは?
さて、まず「フェーズフリー住宅」とはどんなものなのか。
これは「平常時」と「災害時」という2つの時間を「フェーズ(Phase)」とし、その時間の垣根を「フリー」にした住宅のことを言います。
例えば災害時のことばかりを考えてシェルターのような家にしても、日々の生活が快適かつ満足度の高いマイホームとは言えませんし、デザイン性や開放感ばかりを求めて柱の数を減らしてしまっては地震に弱いマイホームになってしまいます。
日々の暮らし(平常時)の快適さも、万が一の時(災害時)の備えも両立した住宅
それがフェーズフリー住宅なのです。
昨今注目を集める住宅トレンドで、フェーズフリー住宅のシンポジウムやコンペなども行われています。
それではさっそく、フェーズフリー住宅の基本的な考え方とアイデア・参考例を紹介します。
災害サイクルを知る
「平常時の快適」は比較的想像しやすく、通常の間取りプランニングで実現していけます。
ですから「非常時」のアイデアを、日々の暮らしに影響出ない形で採用していければ自然とフェーズフリー住宅になります。
そのためにまず、災害サイクルを知りましょう。
災害サイクルは、
- 平常時
- 災害予知・早期警報
- 災害発生
- 被害評価
- 災害対応
- 復旧
- 平常時へ
という流れです。
地震、台風、土砂災害、新型コロナウイルスなどの感染症流行など、基本的にほぼすべての災害にこのサイクルが当てはまります。それぞれの災害を想定し、各パートをマイホームに当てはめることで非常時の備えをしていきます。
それではそんなフェーズフリー住宅として採用したいアイデアや参考例を紹介していきます。
フェーズフリー住宅の例・アイデア集
パントリー
まずはパントリーです。いわゆる食品庫です。
あまり料理をしない方にとっては冷蔵庫で十分だと間取りプランから最初に消えてしまいがちなパントリーですが、フェーズフリー住宅ではかなり重要な役割を果たします。
平常時には、買ってきたものの収納がパントリーで完結するという利便性、調理時には保管場所がわかりやすく取り出しやすい、さらにはコストコや業務スーパーでのまとめ買いによる食費削減も可能にするなど、あると便利な存在です。
非常時でも、パントリーに一定量の食品があることの安心感は大きいです。震災や大型台風により生活インフラがストップした際にも、長期間持ちこたえることができるでしょう。特に2020年のコロナウイルス流行時に不要不急の外出の自粛要請が出され「食品の買いだめ」が発生した時には、スーパーに駆け込んでも物が売っていないという事態が一時的に発生しました。
「食」が確保されることは、あらゆる災害時にパニックの抑制に役立つのです。
太陽光発電システム・蓄電池
次に太陽光発電(ソーラーパネルなど)システムと蓄電池です。
住宅業界、リフォーム業界では、エネルギー基本計画、ZEHロードマップなどにより太陽光発電システムの導入が活発になっています。
自分の家で発電するわけですから、平常時においては光熱費の削減が可能というメリットがあります。初期投資こそかかりますが、時には「売電」も可能で経済的なメリットがあるのは非常に嬉しいポイントです。
災害時においても、地震や台風により停電が発生した際に安心感があります。「地震で近隣は停電していたけれど我が家だけは電気が通っていて安心できた」というリアルな体験談もあるほどです。
ただ注意していただきたいのは、
- 地震により太陽光発電システム事態が損傷した場合は機能しないこと
- 発電システムのみで利用する場合の設定によっては、仕様箇所や電力に制限があるため完全な日常と同様ではない
といったこともあります。ですから蓄電池なども合わせて採用しておくと、より安心感が高まります。
土間
敷地を広くとれる場所では土間を採用することも検討しましょう。
土間は平常時では、雨の日にそのまま家の中まで入ることができたり、外飼いのペットも入れることができます。さらに汚れやすいアウトドアグッズやベビーカー、自転車などもそのまま収納できるというメリットがあります。
例えば台風などの災害時にも、ペットや自転車を避難させることができます。コロナウイルスなど感染症流行時の自宅待機要請時には、運動不足の子供が遊ぶ場所として活用することもできます。
造作棚
マイホーム建築時に大工さんに作ってもらう造作棚も効果的です。
平常時には、家のインテリアや形状にぴったりと合う棚を設置することができ、家具購入費用やサイズが合わないなどのトラブルを避けるメリットがあります。
地震などの災害時には、背の高い家具は転倒の危険性が伴いますが、造作棚であればその心配がありません。転倒した家具により避難経路が遮られ、逃げ遅れてしまうという事例もありましたから、ぜひ採用したいアイデアの1つです。
回遊性をもたせた間取り
フェーズフリー住宅においては、行き止まりのない間取り、つまり回遊性を持たせた間取りも検討しましょう。
回遊性の高い間取りは平常時においても快適です。特にキッチンなどの水周りの回遊性を上げておけば、家事動線の確保になり朝の忙しい時間もストレスなくこなすことができます。
災害時においても、行き止まりの場所を減らしておけば避難経路がふさがれる可能性が減り、速やか避難することができるというメリットがあります。
外水栓
次に外水栓です。家の外で使える水道ですが、こちらもフェーズフリー住宅の参考例としてオススメです。
平常時は、庭のガーデニングや洗車、さらには庭先でのバーベキューなど外の水道は日々の生活でも何かと便利です。
災害時にライフラインが止まってしまった際の水源確保や、ガスコンロなどを用いた簡易的な食事の際にも便利です。
シャッター
各居室の窓やサッシに、シャッターの設置も検討しましょう。
平常時においてシャッターは、基本的に防犯を目的として設置しますが、あればやはり安心感があります。
災害時においては、特に台風などの警報が発令された際に効果を発揮します。シャッターを閉めることで窓を破損から守ることができます。
床下点検口
最後になりますが、整備や点検のしやすい床下点検口です。
平常時においても、整備のしやすい床下点検口は、結果的に定期点検の精度を上げ、万が一不具合が見つかった際も速やかに対応することができます。
災害時においては、特に災害が去った後の「復旧」パートで、まずは自分で目視点検がしやすく、さらに担当が来た際にも手早く修繕をしてもらうことが可能です。
災害後により速やかに平常を取り戻すために、フェーズフリー住宅の基本とも言えるポイントです。
フェーズフリー住宅のまとめ
ということで、フェーズフリー住宅に関して基本の考え方やアイデアや実例集を紹介させていただきました。
いずれも日々の快適な暮らしはもちろん、万が一の際に「あって良かった」というアイデアばかりですので、これからマイホームを検討している方はぜひ採用してみてください。
いつ発生するのかわからない「万が一」が、もっと高い確率で発生する可能性を指摘される昨今、ますは自分の命は自分で守るという発想で、想像・人生設計をしていきましょう。
それでは。
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