共働きで家を買うとき、「住宅ローンは夫婦で組んだ方がいいのか、それともどちらか一人で借りた方がいいのか」と迷う方は多いでしょう。
夫婦それぞれが住宅ローンを組むペアローンなら、一人で借りるより借入可能額を増やせることがあります。夫婦それぞれが要件を満たせば、住宅ローン控除を利用できるのも特徴です。
ただし、ペアローンで借りられる金額が増えても、家計に余裕ができるわけではありません。
住宅ローンは20年、30年と返済が続きます。その間には、出産・育児、時短勤務、転職、病気、介護などで、夫婦どちらかの収入が下がることもあります。
さらにペアローンでは、団信、諸費用、住宅の持分、離婚時の整理など、単独ローンとは違う注意点もあります。
ペアローンを選ぶときに見るべきなのは、「二人ならいくら借りられるか」ではなく、「二人の働き方が変わっても返し続けられるか」です。
この記事では、ペアローンと単独ローンのメリット・デメリットに加え、収入合算との違い、住宅ローン控除、団信、持分割合まで、FP2級・宅建士の視点を交えて解説します。
結論|ペアローンと単独ローンはどっちがいい?
ペアローンと単独ローンのどちらが合うかは、現在の世帯年収だけでは決められません。
| こんな家庭 | まず検討したい方法 |
|---|---|
| 一人の収入で希望額を無理なく借りられる | 単独ローンを基本に比較 |
| 夫婦とも安定した収入があり、今後も働く予定 | ペアローンも候補 |
| 一人では借入希望額に少し届かない | ペアローン・収入合算を比較 |
| 出産・育児などで一方の収入が下がる可能性が高い | 借入額を抑えた単独ローンも有力 |
| 夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用したい | ペアローンの条件を確認 |
| 契約や返済管理をシンプルにしたい | 単独ローン |
ここで注意したいのが、「ペアローンなら高い家を買える」という考え方です。

二人で借りれば予算を上げられるなら、ペアローンの方がよさそうじゃないですか?

そこが一番気をつけたいところ。「借りられる額」が増えても、「無理なく返せる額」まで同じように増えるとは限らないよ。
ペアローン・単独ローン・収入合算の違い
夫婦の収入を住宅購入に使う方法は、ペアローンだけではありません。
一人で借りる単独ローンのほか、一人が住宅ローンを借り、配偶者などの収入を審査に加える「収入合算」という方法もあります。
| 比較項目 | 単独ローン | ペアローン | 収入合算 |
|---|---|---|---|
| 住宅ローン | 1本 | 2本 | 基本は1本 |
| 基本的な仕組み | 一人で借りる | 二人がそれぞれ借りる | 一人の借入れにもう一人の収入を合算 |
| 債務者 | 一人 | 二人それぞれ | 方式によって異なる |
| 住宅ローン控除 | 借入人が対象 | それぞれ要件を満たせば対象 | 方式によって異なる |
| 団信 | 借入人が加入 | それぞれ加入するのが基本 | 方式・商品によって異なる |
収入合算には、連帯保証型や連帯債務型などがあります。そのため、住宅ローン控除や団信の扱いを「収入合算ならこう」と一括りにはできません。
一人では希望額に少し届かない場合でも、すぐにペアローンと決めず、収入合算を含めて比較すると選択肢が広がります。
同じ5,000万円を借りるなら返済額はどう変わる?
ペアローンにすると毎月の返済額そのものが安くなる、と思っている方もいるかもしれません。
しかし、同じ金額を同じ金利・返済期間で借りるのであれば、ローンを2本に分けただけで返済額が安くなるわけではありません。
例えば、次の条件で考えてみます。
- 借入総額:5,000万円
- 金利:年1.0%
- 返済期間:35年
- 元利均等返済
- ボーナス返済なし
単独ローンの場合
夫が5,000万円を借りると、毎月返済額は概算で約14.1万円、総返済額は約5,928万円です。
ペアローンの場合
夫2,500万円、妻2,500万円に分けて同じ条件で借りても、二人の返済額を合計すれば毎月約14.1万円、総返済額も約5,928万円です。
つまり、ペアローンそのものに返済額を安くする効果があるわけではありません。
違いが出てくるのは、借入可能額、住宅ローン控除、団信、諸費用、将来の収入変化といった部分です。
ペアローンのメリット
単独ローンより借入可能額を増やせる可能性がある
ペアローンでは、夫婦それぞれが自分の収入を基準に住宅ローンを申し込みます。
一人の収入だけでは希望する借入額に届かなくても、二人で借りることで必要な金額を確保できる場合があります。
特に住宅価格の高い地域では、ペアローンを利用することで物件選びの幅が広がるでしょう。
ただし、審査で提示された借入上限を、そのまま住宅予算にするのはおすすめできません。
住宅ローン以外にも、子どもの教育費、車の購入費、住宅の修繕費、老後資金などが必要になるからです。
夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用できる可能性がある
ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローン契約者になるため、各自が住宅ローン控除の要件を満たせば、それぞれ控除の対象になれます。
単独ローンにはないメリットですが、「二人だから住宅ローン控除も2倍になる」と考えるのは正確ではありません。
実際に受けられる控除額は、それぞれの住宅ローン残高や住宅の持分、住宅そのものの要件、本人が負担している所得税・住民税などによって変わります。
例えば、夫婦のどちらかの納税額が少なければ、計算上の控除可能額を十分に使い切れないこともあります。
住宅ローン控除は「使えるかどうか」だけではなく、夫婦それぞれが実際にどの程度使えそうかまで見て比較した方が現実的です。
夫婦それぞれ団信に加入できる
通常のペアローンでは、夫婦それぞれが自分の住宅ローンについて団信に加入します。
例えば夫3,000万円・妻2,000万円を借り、夫に団信の支払事由が発生した場合、基本的には夫が借りている3,000万円が保障され、妻の2,000万円はそのまま残ります。
「二人とも団信に入っている=どちらかに万一があれば住宅ローンが全部なくなる」ではありません。
一方、金融機関によっては、一方に所定の支払事由が発生した際に、二人分のローン残高を保障する「ペアローン連生団信」もあります。
ただし、連生団信は通常の団信とは保障内容や金利負担などが異なります。商品によっては、支払事由に該当していない側の債務が免除された場合に税務上の扱いにも注意が必要です。
「保障が広いから得」と決めず、金利と保障条件の両方を比べる必要があります。
ペアローンのデメリット
住宅ローンが2本になるため諸費用が増えやすい
ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローン契約を結ぶため、単独ローンより手続きや諸費用が増えやすくなります。
ただし、「手数料がすべて2倍になる」とは限りません。
金融機関によって手数料の計算方法が違うため、金利だけでなく融資手数料や登記関連費用などを含めた総額で比べる方が分かりやすいでしょう。
一方の収入が減っても住宅ローンは残る
ペアローンを考えるうえで最も注意したいのが、二人の収入を前提に住宅予算を上げすぎることです。
住宅ローン返済中に、出産・育児休業、時短勤務、転職、病気やケガ、介護などが重なれば、今と同じ世帯収入を維持できない時期もあり得ます。
だからといって、一人の収入だけですべて返せる金額に必ず抑えなければならないわけではありません。
大切なのは、収入が一時的に落ちても、貯蓄やもう一方の収入を使いながら家計を立て直せる余力を残しておくことです。
離婚時に住宅とローンの整理が複雑になりやすい
ペアローンでは、夫婦それぞれが住宅ローンを負い、不動産も共有名義になっているケースが多いため、離婚時の整理は複雑になりがちです。
例えば夫が家に住み続けることになっても、「妻名義の住宅ローンを夫名義へ変更すれば終わり」というわけではありません。
不動産の名義変更と住宅ローン契約上の債務者変更は別の手続きです。
売却してローンを完済する、一人で借り換えられるか金融機関へ相談するなど、住宅と住宅ローンを一緒に整理する必要があります。
単独ローンのメリット・デメリット
単独ローンは、夫婦のどちらか一人が住宅ローン契約者になる方法です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 契約や返済管理がシンプル | 一人の収入では希望額に届かないことがある |
| ペアローンより諸費用を抑えやすい | 住宅ローン控除を利用できるのは基本的に借入人 |
| もう一方の収入を貯蓄や教育費へ回しやすい | 主債務者の収入減の影響を受けやすい |
| ローン関係を整理しやすい | 夫婦の収入を直接生かして借入額を増やしにくい |
「単独ローンなら安全」という意味ではありません。
主債務者の収入が大きく下がれば、返済が苦しくなる可能性はあります。
一方、一人の収入を基準に無理のない住宅価格へ抑え、もう一方の収入を教育費や貯蓄、資産形成などに回せる家計なら、将来の選択肢を残しやすくなります。
FP視点|今の世帯年収ではなく「収入が減った家計」で考える
FPの視点でペアローンを考えるなら、現在の世帯年収だけで住宅予算を決めるのは避けたいところです。
例えば、
- 夫:年収600万円
- 妻:年収400万円
の家庭なら、現在の世帯年収は1,000万円です。
しかし、妻が出産後に時短勤務へ変わったり、夫が転職して一時的に年収が下がったりすれば、世帯年収1,000万円を前提にした返済計画は崩れます。
ここで見るべきなのは、年収の大きさそのものより毎月の手取りから住宅費、生活費、教育費、貯蓄を差し引いても返済を続けられるかです。
さらに、ペアローンを検討するときは、次のような状態も一度想定してみてください。
- 一方の収入が半年~1年ほど下がったらどうなるか
- 育休や時短勤務中でも毎月赤字にならないか
- 教育費が増える時期と住宅ローン返済が重なっても余裕があるか
- 変動金利を選ぶ場合、金利が上がっても返済を続けられるか
- 病気や死亡時に団信・生命保険でどこまで補えるか
住宅ローン審査で借りられる金額ではなく、家計から逆算した住宅予算を先に決める。これがペアローンでも単独ローンでも共通する基本です。
宅建士視点|ペアローンでは「住宅の持分」も忘れない
ペアローンでは住宅ローンの借入割合だけでなく、不動産を誰がどれだけ所有するのかも大切です。
例えば6,000万円の住宅について、夫が4,000万円、妻が2,000万円を負担したとします。
この場合、購入資金の負担割合は、夫が3分の2、妻が3分の1です。
ところが、深く考えずに不動産の持分を夫婦2分の1ずつで登記すると、実際に負担した金額と取得した不動産の割合にズレが生じます。
購入資金の負担割合と登記上の持分割合が異なる場合、その差について夫婦間の贈与として扱われる可能性があります。
「夫婦だから持分は半分ずつ」で決めず、頭金と住宅ローンを含め、誰がいくら負担するのかを整理してから持分を決めることが大切です。
持分は、住宅ローン控除だけでなく、将来の売却・離婚・相続にも関係します。
なお、実際に贈与税が発生するかどうかなど、個別の税務判断については税務署や税理士へ確認してください。
ペアローンで後悔しやすい5つのパターン
借入可能額いっぱいまで物件予算を上げる
ペアローンを使えば借入可能額が増えるため、当初予定していた住宅予算を引き上げたくなることがあります。
しかし、住宅に使うお金が増えれば、その分だけ教育費や老後資金などに回せるお金は減ります。
審査上の上限ではなく、家計から決めた予算を基準にしましょう。
住宅ローン控除だけを見てペアローンにする
夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用できる可能性は魅力ですが、実際に使える控除額は人によって異なります。
税メリットだけでなく、追加でかかる諸費用や将来の収入変化まで含めて比べる必要があります。
育休・時短勤務後の収入を返済計画に入れていない
現在のフルタイム収入だけで住宅予算を決めると、出産後に家計が苦しくなることがあります。
出産予定がある場合は、育休中だけでなく復職後の働き方まで含めて返済額を考えると安心です。
団信に入っていれば二人分のローンがなくなると思っている
通常のペアローンでは、一方に団信が適用されても、もう一方が借りている住宅ローンは残るのが基本です。
連生団信を利用する場合は、通常の団信との保障範囲や追加負担の違いまで比べましょう。
住宅の持分を何となく2分の1ずつにする
資金負担割合と持分割合のズレは、贈与税の問題につながることがあります。
住宅ローンを決める段階で、頭金と持分まで一緒に整理しておくと後から慌てずに済みます。
ペアローンが向いている人・単独ローンが向いている人
ペアローンを検討しやすい人
- 夫婦とも安定した収入がある
- 今後も二人で働く予定がある
- 単独ローンでは希望額に少し届かない
- 収入が一時的に減っても対応できる貯蓄がある
- 夫婦それぞれ住宅ローン控除を活用できる見込みがある
- 団信や住宅の持分まで理解して選べる
単独ローンを検討しやすい人
- 一人の収入で希望する住宅を無理なく購入できる
- 出産・育児などで一方の収入が大きく変わる予定がある
- 住宅ローン契約をできるだけシンプルにしたい
- 借入額を抑えて教育費や老後資金に余裕を残したい
- 夫婦どちらかの今後の働き方がまだ決まっていない
一人では少し借入額が足りないものの、住宅ローンを2本にする必要までは感じない場合は、収入合算も比較対象に入ります。
「単独かペアか」の二択だけで考えないことも、住宅ローン選びでは大切です。
ペアローンと単独ローンについてよくある質問
共働きならペアローンにした方が得ですか?
共働きという理由だけでペアローンが有利とはいえません。
夫婦それぞれ住宅ローン控除を利用できる可能性はありますが、諸費用、団信、将来の収入変化、住宅の持分まで含めて判断する必要があります。
ペアローンの住宅ローン控除は2倍になりますか?
単純に2倍になるわけではありません。
夫婦それぞれが要件を満たせば各自が住宅ローン控除を利用できますが、実際の控除額は住宅ローン残高や持分、住宅の要件、本人の所得税・住民税などによって変わります。
ペアローンは手数料も2倍ですか?
住宅ローンが2本になるため単独ローンより費用は増えやすいものの、すべての費用が単純に2倍になるとは限りません。
金融機関ごとの手数料体系を見て、住宅ローンにかかる諸費用全体で比較してください。
ペアローンで夫が亡くなったら妻のローンもなくなりますか?
通常のペアローンでは、夫の団信が適用されても、妻自身が借りている住宅ローンは残るのが基本です。
一方、金融機関によっては、一方に所定の支払事由が発生したときに二人分のローンを保障する連生団信もあります。
ペアローンを組んだ後に妻・夫が退職したらどうなりますか?
退職して収入がなくなっても、住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
また、所得税・住民税の負担が減れば、住宅ローン控除を十分に活用できなくなる可能性もあります。
出産・育児、転職などで退職や収入減が想定される場合は、収入が下がった状態でも返済を続けられるかを借入前に試算しておきましょう。
ペアローンと収入合算はどちらがおすすめですか?
何を重視するかによって変わります。
夫婦それぞれが住宅ローン契約者になりたい場合はペアローン、住宅ローンを基本的に1本にしながら二人の収入を審査に利用したい場合は収入合算が候補になります。
収入合算は方式によって住宅ローン控除や団信の扱いも異なるため、具体的な商品条件を比較して決めてください。
離婚したらペアローンはどうなりますか?
離婚しただけで住宅ローン契約がなくなったり、債務者を自由に変更できたりするわけではありません。
住宅を売却してローンを完済する、一人が住み続けるために借換えを検討するなど、住宅の所有関係とローンの両方を整理する必要があります。
まとめ|ペアローンは「二人ならもっと借りられる方法」ではない
ペアローンは、夫婦それぞれの収入を生かして住宅を購入できる便利な仕組みです。
単独ローンでは希望額に届かない場合でも住宅の選択肢を広げられ、夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になれる可能性もあります。
一方で、住宅ローンが2本になる以上、二人がそれぞれ長期間の返済責任を負います。
ペアローンを検討するときは、借入可能額だけではなく、
- 収入が一時的に減っても返済を続けられるか
- 住宅ローン控除を実際にどの程度使えそうか
- 団信でどこまで保障されるか
- 単独ローンより諸費用がどの程度増えるか
- 購入資金の負担割合と住宅の持分が合っているか
- 教育費や老後資金まで含めても住宅費が重すぎないか
まで見ておく必要があります。
ペアローンは「二人ならもっと借りられる方法」ではなく、「二人がそれぞれ住宅ローンを背負う方法」です。
現在の世帯年収だけで判断せず、収入が下がった時期や10年後、20年後の家計まで想像したうえで、単独ローン・ペアローン・収入合算の中から無理のない方法を選びましょう。


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