
住宅ローン減税って、結局いくら戻るんですか?
住宅ローンを組んで家を買うなら、確認しておきたいのが「住宅ローン減税(住宅ローン控除)」です。
一定の条件を満たすと、住宅ローンの年末残高などをもとに、所得税や一部の住民税の負担を軽くできます。
ただし、「年末残高の0.7%が全員そのまま戻ってくる」という制度ではありません。
実際に利用できる控除額は、住宅ローン残高だけでなく、住宅の性能、所得税・住民税の額、家族構成などによって変わります。

「計算上いくら控除できるか」と「実際に税金から引ける額」は別なんだ。ここを分けて考えるとわかりやすいよ。
この記事では、住宅ローン減税の仕組みから年収別のモデルケース、住宅ごとの借入限度額、確定申告、ペアローンや繰上返済で注意したい点まで、FP2級・宅建士の視点を交えて解説します。
結論|住宅ローン減税はいくら戻る?
住宅ローン減税の基本となる控除率は0.7%です。
たとえば、住宅ローン減税の対象となる年末残高が3,000万円なら、計算上の控除額は次のようになります。
3,000万円×0.7%=21万円
ただし、21万円がそのまま現金でもらえるわけではありません。
住宅ローン減税は「税額控除」といい、まず所得税から直接差し引きます。所得税から引ききれない分がある場合は、一定の範囲で翌年度の住民税からも控除されます。
住民税から控除できる額には上限があり、最大9万7,500円です。
| 控除額を左右するもの | 影響 |
|---|---|
| 年末の住宅ローン残高 | 返済が進んで残高が減れば、計算上の控除額も減る |
| 住宅の性能 | 控除対象となる借入限度額や控除期間が変わる |
| 所得税・住民税 | 税額が少ないと控除枠を使い切れないことがある |
| 家族構成・所得控除 | もともとの税額が変わる |
| 入居時期 | 適用される制度・条件が変わる場合がある |
そのため、「年収600万円なら必ず○万円戻る」という単純な制度ではありません。
住宅ローン減税とは?所得税から直接差し引く税額控除
住宅ローン減税の正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。
住宅ローンを利用して自宅を新築・購入・増改築などし、一定の条件を満たした場合に利用できます。
よく「払った税金が戻ってくる制度」と説明されますが、もう少し正確にいうと、計算した住宅ローン控除額を所得税から差し引き、引ききれない部分は一定額まで翌年度の住民税から差し引く制度です。
なお、控除額を計算するときは、単純な住宅ローン残高だけでなく、住宅ごとの借入限度額や取得価額などの上限も考慮されます。
住宅ローン減税を受けるための主な条件
住宅ローンを組んで家を買えば、自動的に減税を受けられるわけではありません。
代表的な条件は次のとおりです。
- 自分が主として住むための住宅であること
- 住宅の取得などから6か月以内に入居すること
- その年の12月31日まで引き続き居住していること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
- 原則として合計所得金額が2,000万円以下であること
- 一定の床面積要件を満たすこと
- 住宅の種類に応じた省エネ性能・耐震性などの条件を満たすこと
床面積は原則として50㎡以上です。
ただし、40㎡以上50㎡未満でも、合計所得金額1,000万円以下など一定の条件を満たせば対象になる住宅があります。
なお、子育て世帯・若者夫婦世帯向けの借入限度額上乗せを利用する場合は50㎡以上が必要です。
宅建士として注意したい「広告面積」と「登記面積」の違い
マンションを購入する人は、床面積の確認方法に注意してください。
住宅ローン減税の床面積は、原則として登記事項証明書に記載された面積で判断します。
マンション広告では、壁の中心線から測る「壁芯面積」が使われることがあります。一方、登記では壁の内側から測る「内法面積」が使われるため、登記面積の方が小さくなることがあります。
たとえば広告では40㎡を超えていても、登記上は40㎡未満という可能性があります。
床面積が適用要件の境目にある住宅では、購入を決める前に登記上の面積まで確認しておきましょう。
住宅の性能によって借入限度額が違う
住宅ローン減税では、住宅の性能によって控除対象となる住宅ローンの上限が変わります。
「5,000万円借りたから5,000万円すべてに0.7%」とは限りません。
新築住宅の主な借入限度額
| 住宅の種類 | 一般世帯 | 子育て・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 (2026~2027年入居) |
2,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
子育て世帯・若者夫婦世帯とは、原則として入居した年の12月31日時点で19歳未満の扶養親族がいる世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯です。
ここで注意したいのが、省エネ基準適合住宅です。
2028年以降に入居する新築の省エネ基準適合住宅は、原則として住宅ローン減税の対象外になります。
ただし、2027年12月31日以前に建築確認を受けた住宅や、登記簿上の建築日が2028年6月30日以前となる住宅などには、借入限度額2,000万円・控除期間10年の経過措置があります。
また、省エネ基準を満たさない「その他の新築住宅」は、現在は原則として住宅ローン減税の対象外です。
中古住宅は「新築より不利」とは限らない
現在は、省エネ性能の高い中古住宅についても住宅ローン減税が拡充されています。
| 中古住宅の種類 | 一般世帯 | 子育て・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
| その他の対象中古住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
新築か中古かだけで比べるのではなく、住宅の性能区分まで確認する必要があります。
年収別|初年度はいくら戻る?モデルケースで比較
ここでは、同じ住宅ローン残高でも年収によって実際に利用できる控除額が変わることを確認してみます。
シミュレーション条件
- 給与所得者
- 住宅ローン減税の対象となる年末残高:3,000万円
- 計算上の住宅ローン控除額:21万円
- 住宅の借入限度額は3,000万円以上
- 配偶者控除・扶養控除なし
- 社会保険料を年収の約15%として概算
- 生命保険料控除・iDeCo・医療費控除などは考慮しない
- 現行の所得税ルールをもとにした簡易計算
| 給与年収 | 計算上の控除枠 | 初年度に利用できる額の概算 |
|---|---|---|
| 400万円 | 21万円 | 約11万円 |
| 600万円 | 21万円 | 約21万円 |
| 800万円 | 21万円 | 約21万円 |
※税額は社会保険料、家族構成、各種控除、居住地などによって変わります。上記は制度の仕組みを理解するための概算です。
年収400万円|控除枠を使い切れないことがある
年末残高3,000万円なら計算上の控除枠は21万円です。
しかし、もともとの所得税額が少ない場合、住民税から控除できる上限を合わせても21万円すべてを利用できないことがあります。
住宅ローン残高を増やせば必ず減税額も増えるわけではない、という代表的なケースです。
年収600万円|21万円を使い切れるケースもある
同じ年末残高3,000万円でも、税額が十分にあれば計算上の控除枠21万円を利用できる可能性があります。
年収400万円との違いは住宅ローン残高ではなく、所得税・住民税の負担額です。
年収800万円|年収が増えても控除額は無制限に増えない
年収800万円でも、年末残高が3,000万円なら計算上の控除枠は21万円です。
税金を多く納めているからといって、30万円、40万円と住宅ローン減税が増えていくわけではありません。

年収が高いほど、住宅ローン減税がどんどん増えるわけではないんですね。

そうなんだ。年収が高い人は控除枠を使い切りやすくなるけれど、年末残高や住宅ごとの借入限度額が上限になるよ。
13年間ではいくら戻る?毎年「初年度と同じ額」ではない
初年度に21万円控除できると、「21万円×13年=273万円」と考えたくなります。
しかし、通常は住宅ローンを毎月返済していくため、年末残高は少しずつ減っていきます。
そのため、計算上の住宅ローン控除額も年々小さくなります。
参考として、次の条件で13年間の「ローン残高から計算した控除額」を試算します。
- 住宅ローン借入額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 金利:年1.0%で一定
- 元利均等返済
- ボーナス返済なし
- 控除対象借入限度額:3,000万円以上
- 所得税・住民税の上限は考慮しない
| 年 | 年末残高の概算 | 0.7%の控除額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 約2,928万円 | 約20.5万円 |
| 5年目 | 約2,633万円 | 約18.4万円 |
| 10年目 | 約2,247万円 | 約15.7万円 |
| 13年目 | 約2,006万円 | 約14.0万円 |
この条件では、ローン残高だけで計算した13年間の控除額は合計約225万円です。
ただし、これは所得税・住民税の上限を考慮していません。
年収や各種所得控除によって税額が少ない年があれば、実際に利用できる総額はこれより少なくなります。
また、育休、転職、退職などで収入が変われば、同じ人でも年によって使える控除額が変わります。
中古住宅で確認したい耐震・床面積・住宅性能
中古住宅でも、一定の条件を満たせば住宅ローン減税を利用できます。
耐震性については、主に次のいずれかを確認します。
- 1982年1月1日以後に建築された住宅
- それ以前の住宅でも一定の耐震基準を満たすことが証明された住宅
- 取得後、所定の手続きを行って耐震改修をする住宅
以前は「木造20年以内、マンション25年以内」といった築年数がよく目安にされていましたが、現在はその古い基準だけで対象かどうかを判断しないようにしてください。
さらに、省エネ性能の高い中古住宅として控除を受けるなら、その性能を証明する書類も必要になります。
宅建士としては、住宅ローン減税を資金計画に入れるなら、売買契約後ではなく契約前に、建築年月日・登記面積・耐震性・住宅性能を確認することをおすすめします。
住宅ローン減税で損をしないための6つのポイント
① 「最大控除額」ではなく自分の税額を見る
住宅広告などでは「最大○百万円控除」といった金額が目立ちます。
しかし、その最大額まで使える人ばかりではありません。
住宅ローン残高だけではなく、自分が納めている所得税・住民税まで確認して初めて、実際に使えそうな控除額が見えてきます。
② 住宅性能は契約前に確認する
認定長期優良住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅では借入限度額が異なります。
「省エネ住宅と聞いたから大丈夫」と判断せず、住宅ローン減税ではどの区分になるのか、必要な証明書を取得できるのかまで住宅会社や不動産会社へ確認しましょう。
③ 減税目的だけでペアローンを選ばない
夫婦それぞれが住宅ローンを契約するペアローンでは、双方が要件を満たせば、それぞれ住宅ローン減税を利用できます。
一人では使い切れない控除枠を夫婦それぞれの税額から利用できるケースもあります。
ただし、住宅ローン減税を増やすことだけを理由にペアローンを選ぶのはおすすめしません。
ローンが2本になることによる諸費用、出産・育児による収入減少、将来の働き方なども考える必要があります。
さらに、実際の借入負担と不動産の持分割合が大きくずれると、税務上の問題につながる可能性もあります。借入割合と持分は契約前に確認しておきましょう。
④ 繰上返済は「減税額」と「減る利息」を比較する
繰上返済をすると年末残高が減るため、その後の住宅ローン控除額も小さくなる場合があります。
一方、住宅ローンの元金が減れば、将来支払う利息も減ります。
また、繰上返済によって返済期間が10年未満になると、住宅ローン減税を受けられなくなる場合があります。
FPの視点では、「住宅ローン減税が減るから繰上返済しない」と決めるのではなく、減税額・住宅ローン金利・手元資金を合わせて判断するのが基本です。
⑤ 入居時期を確認する
住宅ローン減税は「契約した年」だけで決まる制度ではありません。
入居した年や建築確認の時期などによって適用条件が変わる場合があります。
「12月中に入居すれば単純に1年分得」と考えるのではなく、自分の住宅にどの条件が適用されるのか確認してください。
⑥ 住み替えなら3,000万円特別控除との関係を確認する
現在の自宅を売って新居へ住み替える人は、売却時の税金にも注意が必要です。
マイホーム売却で利用できる「3,000万円特別控除」など一定の譲渡所得の特例と、住宅ローン減税は、適用する時期によって併用できない場合があります。
「旧居の売却で税金を減らす方が得か」「新居で住宅ローン減税を使う方が得か」は、売却益や住宅ローン残高によって変わります。
住み替えの場合は、新居だけを見るのではなく、旧居の売却税まで含めて比較しましょう。
住宅ローン減税の1年目は確定申告が必要
住宅ローン減税は、条件を満たしていても何もしなければ自動的に適用されるわけではありません。
住宅ローン減税を初めて受ける年は、会社員でも原則として確定申告が必要です。
| 控除を受ける年 | 給与所得者の主な手続き |
|---|---|
| 1年目 | 原則として確定申告 |
| 2年目以降 | 年末調整で対応可能 |
現在は、対応している金融機関であれば年末残高情報を税務当局へ提出する「調書方式」も進んでおり、マイナポータル連携などを利用できる場合があります。
それでも、初年度の確定申告そのものが不要になるわけではありません。
入居した翌年になってから慌てないよう、必要書類や手続方法を早めに確認しておきましょう。
住宅ローン減税のために借入額を増やすのは得?
住宅ローン減税を知ると、「頭金を減らして住宅ローンを多く借りた方が得なのでは?」と考える人もいます。
確かに、年末残高が多ければ計算上の控除額が増える場合はあります。
しかし、控除率は0.7%です。
借入額を増やせば、その分だけ住宅ローンの利息負担も増えますし、そもそも住宅ごとの借入限度額や本人の税額によっては控除額が増えないこともあります。

「減税で戻るから、もう少し高い家を買っても大丈夫」と考えるのは危ないんですね。

そうだね。減税は家計を助けてくれるけれど、住宅価格そのものが安くなるわけではないよ。減税がなくても返せる予算を基本に考えよう。
FPとしては、住宅ローン減税だけを見るのではなく、住宅ローン金利、購入後に残す現金、教育費、老後資金まで含めて借入額を決めることをおすすめします。
購入前に確認したい|住宅ローン減税を使える家か
住宅ローン減税では、借りる人だけでなく購入する住宅そのものも条件を満たしている必要があります。
宅建士として、契約前に確認してほしいのは次の項目です。
- 登記上の床面積
- 住宅の建築年月日
- 中古住宅の場合の耐震性
- 認定長期優良住宅・ZEHなどの住宅性能区分
- 性能を証明するために必要な書類
- 実際に入居する予定時期
住宅会社や不動産会社の広告に「住宅ローン減税対象」と書かれていたとしても、自分自身の所得や住宅ローンの条件まで含めて適用が保証されるわけではありません。
住宅ローン減税を数百万円単位で資金計画に入れているなら、契約前に「この住宅はどの区分で、何年間、いくらまで対象になるのか」を確認しておきましょう。
住宅ローン減税でよくある質問
Q. 年末残高の0.7%は必ず戻りますか?
いいえ。住宅ごとの借入限度額があるほか、所得税や住民税から控除できる範囲を超えた部分は使い切れないことがあります。
Q. 年収が高いほど住宅ローン減税は増えますか?
年収だけでは決まりません。
年収が高い人は所得税などの負担も大きくなりやすいため控除枠を使い切りやすい傾向がありますが、年末残高や住宅ごとの借入限度額が上限になります。
Q. 中古住宅でも住宅ローン減税は使えますか?
一定の床面積や耐震性などの条件を満たせば利用できます。
省エネ性能の高い中古住宅では、借入限度額の上乗せや13年間の控除を受けられる住宅もあります。
Q. ペアローンなら住宅ローン減税も2倍になりますか?
単純に2倍になるわけではありません。
夫婦それぞれの借入額、持分、所得税・住民税の額などによって実際に利用できる控除額が変わります。
Q. 住宅ローンを繰上返済すると損ですか?
一概にはいえません。
繰上返済によって控除額が減る場合がある一方、住宅ローンの利息も減ります。金利、残りの控除期間、手元資金を合わせて比較してください。
Q. 会社員でも確定申告が必要ですか?
住宅ローン減税を初めて受ける年は、会社員でも原則として確定申告が必要です。
2年目以降は、給与所得者であれば年末調整で住宅ローン減税を受けられます。
Q. 住宅ローン減税のお金はいつ戻りますか?
確定申告で所得税が還付される場合は、申告後に指定口座へ還付されますが、時期は申告方法や処理状況によって異なります。
一方、所得税から引ききれなかった分を住民税から控除する場合は、現金が振り込まれるのではなく、翌年度の住民税が減る形で反映されます。
まとめ|「最大いくら」より自分が実際に使える額を確認する
住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して一定の条件を満たす住宅を購入した場合に、所得税や一部の住民税の負担を軽くできる制度です。
基本となる控除率は0.7%ですが、実際に利用できる金額は、住宅ローン残高だけでは決まりません。
- 住宅ローンの年末残高
- 住宅の性能と借入限度額
- 所得税・住民税の額
- 家族構成や所得控除
- 入居時期
こうした条件によって、「計算上の控除額」と「実際に利用できる控除額」に差が出ます。
FPの視点では、住宅ローン減税を理由に住宅予算や借入額を増やしすぎないこと。宅建士の視点では、住宅ローン減税の対象になる住宅なのかを契約前に確認することがポイントです。
住宅ローン減税は「最大○百万円もらえる制度」と考えるのではなく、自分の住宅と税額なら実際にどこまで使えるのかを見る。
そのうえで、減税がなくても無理なく返せる住宅予算を基本に家づくりを進めましょう。


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