借地権付きの家を売りたくても、「土地は自分のものではないし、そもそも買い手が付くのか」と迷うことがあります。
借地権付き住宅も売却できます。ただし、誰に売るか、地主とどこまで調整できているかによって、価格・費用・売却までの時間が変わります。
売り方は一つではありません。仲介で買主を探す方法もあれば、地主や専門会社に買い取ってもらう方法もあります。どの方法が合うかを考えるには、まず借地契約と地主の意向を確かめ、売却後に手元へいくら残るかまで見ておきたいところです。
3分でわかる宅建士講座|借地権を売る前に知っておきたい5つのこと

- 借地権付き住宅も、借地上の建物と権利を引き継ぐ形で売却できる
- 土地賃借権を第三者に譲る場合は、原則として地主の承諾が必要
- 仲介・地主への売却・専門買取・底地との同時売却など、複数の方法がある
- 譲渡承諾料は法律で一律に定められた金額ではない
- 売却価格ではなく、費用・税金・ローン残債を考慮した手取りで比較する


売れますよ。ただし、土地賃借権なら地主の承諾が必要になるなど、建物だけを売るときとは進め方が違います。
まず借地契約書を確認して、どんな売り方ができそうか一緒に考えていきましょう。
借地権を売却する5つの方法|地主・買主との条件で選ぶ

借地権付き住宅を売るときは、通常、建物と土地を利用する権利を引き継いでもらいます。一般の買主を探す以外にも、地主に買い取ってもらうなどの方法があります。
地主に買う意思があるか、買主を探す時間をかけられるか、地主も土地を売りたいと考えているか。状況によって、検討できる売り方が変わります。
| 売却方法 | 実現できる条件 | 売主が確認する点 |
|---|---|---|
| 仲介で第三者へ | 借地権付き住宅として買主を探す | 地主の譲渡承諾、買主の融資、売却期間 |
| 地主へ売却 | 地主に買い取る意思と資金がある | 価格、建物の扱い、明渡し・精算条件 |
| 専門業者が直接買取 | 業者自身が買主になる | 価格、契約条件、地主調整を誰が行うか |
| 底地と借地権を同時売却 | 地主と借地人が協力できる | 売出価格・代金配分・売買契約の組み方 |
| 先に底地を取得して売却 | 地主が土地を売る意思を持ち、借地人が資金を用意できる | 購入費・税金・登記費用と売却価格の差 |
第三者に仲介で売却する
不動産会社に依頼して、借地権付き住宅を購入したい人を探す方法です。立地や契約条件が合えば、専門会社への直接買取より高い価格で売れる可能性があります。ただし、買主が見つかっても住宅ローン審査や地主の承諾が進まなければ、引渡しまで時間がかかります。
依頼先を選ぶ際は、通常の戸建ての売却実績だけでなく、借地権付き住宅の取引経験や地主への説明、買主の融資相談に対応できるかも聞いてみましょう。
地主に借地権・建物を買い取ってもらう
地主が借地権と建物を買い取れば、土地と建物の権利関係をまとめられます。ただし、地主に必ず買い取ってもらえるわけではありません。買う意思があっても希望する価格とは限らないので、一般の買主に売る場合の見込みとも比べておきましょう。
専門買取会社へ直接売却する
買取会社自身が買主になるため、一般の購入希望者を探す時間を省ける場合があります。一方、会社が負担する再販売費用や地主との調整も査定に反映されるので、仲介で売る場合より低い価格になることもあります。
買取会社に売るからといって、土地賃借権の譲渡承諾が不要になるわけではありません。査定額だけでなく、地主への連絡を誰が担当するか、承諾料を誰が負担するかも比べます。
直接買取を考えている方は、仲介との違いや契約条件、買取会社の選び方も確認しておきましょう。

地主と協力して、底地と借地権を同時に売る
地主も土地を手放したい場合は、底地と借地権付き建物を一体で売る方法があります。買主が土地と建物の権利をまとめて取得できるため、借地権だけの売却より検討する人が増える可能性があります。
ただし、売買代金を地主と借地人でどう分けるかは、事前に話し合わなければなりません。税務上の借地権割合をそのまま当てはめず、建物の価値や借地契約、双方の希望価格を踏まえて決めます。
地主から底地を買い、所有権付き住宅として売却する
借地人が底地を購入してから売る方法もあります。ただし、購入資金に加え、登記費用・税金なども必要です。底地購入費などをかけた分以上に売却条件が改善する見込みがあるかを試算してから進めましょう。
地主の承諾が必要なのはどの売却?

借地権には「土地賃借権」と「地上権」があり、売却時の扱いが異なります。住宅で多い土地賃借権を第三者へ譲渡する場合、民法612条により原則として地主の承諾が必要です。一方、地上権は原則として譲渡に地主の承諾を要しません。
自分の借地権がどちらなのか分からない場合は、借地契約書や登記事項証明書を確認しましょう。両者の違いは、こちらでも詳しく紹介しています。

なお、ここで説明しているのは借地人が建物と土地賃借権を売る場合です。地主が底地を売る場合とは立場が逆なので、同じ承諾の話として考えないようにしましょう。
地主への相談前に、買主に関する条件をそろえる
- 建物と借地権を誰へ売る予定か、買主の利用目的は何か
- 譲渡承諾書の要否、承諾料、支払時期と負担者
- 買主の住宅ローンで必要になる地主の書類
- 買主が建て替える予定なら、その承諾や契約条件も必要か
譲渡への承諾と、建て替えや住宅ローンに関する同意は同じとは限りません。買主が購入後すぐに建て替える予定なら、譲渡だけの承諾で足りるかも、契約前に仲介会社を交えて地主へ確かめておきましょう。
地主が承諾を拒む場合も、すぐに売却不能と決める必要はありません。借地借家法19条には、一定の要件で裁判所へ承諾に代わる許可を求める制度があり、地主が建物と賃借権を自ら買い受ける申立てをする場合もあります。申立てれば必ず許可されるという制度ではありません。
地主に譲渡を断られた場合の相談の進め方や、裁判所への申立てを考えるときの条件は、こちらで確認できます。

譲渡承諾料は誰が・いつ・いくら支払う?

地主の承諾を得る際に、譲渡承諾料・名義書換料などの名目で支払いが発生することがあります。ただし、「借地権価格の何%」という全国共通の法定料金はありません。金額を考える際は、借地契約の定めやこれまでの合意、地主の提示額を確かめます。
売主が負担する取引もありますが、法律ですべて売主負担と決まっているわけではありません。誰が、いつ、どの条件で支払うのかまで書面に残しておきましょう。
| 決めること | 確認例 |
|---|---|
| 承諾する対象 | どの買主への、どの賃借権譲渡か |
| 金額・負担者 | 誰が地主へいくら支払うか |
| 支払時期 | 売買契約時・決済時など、どの時点か |
| 売買不成立時 | 融資不成立・契約解除の場合の返金や条件 |
特に気をつけたいのは、買主の融資が決まる前に承諾料を支払う場合です。売買が成立しなかったときに返してもらえるのか、先に取り決めておきたいところです。地主への依頼方法に迷う場合は、仲介会社や必要に応じて弁護士に相談しましょう。


そうなんです。「10%と聞いたことがある」というだけで、支払額を決める必要はありません。
それよりも、誰がいつ払うのか、もし売買が成立しなかったらどうするのかを、地主さんと書面で決めておきたいですね。
借地権を売却する流れ|査定から引渡しまで

借地権を売ると決めたら、まずは契約の内容を説明できる資料を集めましょう。地主へ先に連絡した方がよいか、不動産会社へ相談してから話を進めるかは、契約内容やこれまでの関係によって異なります。連絡する順番も含めて、売却の段取りを考えます。
| 順番 | 実際にすること | 止まりやすい点 |
|---|---|---|
| 1.資料を確認 | 借地契約書・更新契約書・登記・地代の入金/支払履歴 | 契約年・建物名義・共有者が不明 |
| 2.査定と方法比較 | 仲介・地主・専門買取・同時売却の可能性を確認 | 借地権割合だけで価格を決める |
| 3.地主との条件調整 | 譲渡承諾、費用、必要なら建て替え・融資の条件を確認 | 口頭の承諾だけで売買を進める |
| 4.買主との売買契約 | 承諾・融資・解除条件、費用負担、引渡し条件を書面化 | 承諾が得られないときの手付金の扱いが曖昧 |
| 5.決済・引渡し | 残代金、ローン返済、建物の所有権移転登記、地代の精算など | 売却後の借地契約・地代の支払先が未整理 |
査定に必要な書類がそろわないとき
祖父母の代からの借地では、契約書が見つからない、更新条件が口約束だった、建物の登記名義が故人のままといったこともあります。書類がないから直ちに売れないとは限りませんが、買主や金融機関が条件を判断できないと手続きが止まります。
土地・建物の登記事項証明書や地代の支払い記録、更新時の書類など、手元にあるものから集めましょう。分からないことは無理に埋めず、そのまま不動産会社に伝えて構いません。


もちろん相談できますよ。契約書がなくても、建物の登記や地代を払った記録が残っているかもしれません。
「何が分かっていて、何が分からないか」を伝えれば、借地権を扱う会社にも相談しやすくなります。地主さんへの連絡の仕方も含めて聞いてみましょう。
相続した家を売る場合は、売主の名義を先に整理
相続で借地権を引き継ぐこと自体は、第三者への売買による譲渡とは異なり、地主の譲渡承諾は原則として不要です。ただし、相続後に建物と土地賃借権を第三者へ売るなら承諾が問題になります。
建物の相続登記、共同相続人の合意、契約書・取得費の資料も確かめましょう。
相続した借地権を売るまでの流れが分からない方は、まずこちらを参考にしてください。

相続に伴う名義変更については、次の記事で確認できます。

建物の登記が借地権にどう関わるのか気になる方は、こちらもご覧ください。

古い建物を売る前に、解体だけ先に進めない
古家の解体を急ぐと、建物登記によって備えていた借地権の第三者への対抗力や、建て替え・返還の契約条件に影響する場合があります。建物の現状、接道、地主の承諾、建て替え可否を確認する前に取り壊しを決めないでください。
すでに売り出しているのに買主が見つからない場合は、価格だけが原因とは限りません。融資や地主の承諾、再建築の条件など、売却が進まない理由はこちらで確認できます。

借地権を売ったらいくら残る?費用・税金と手取り

仲介査定額も、買取会社の提示額も、そのまま手元に残る額ではありません。譲渡承諾料や税金、住宅ローンの残債を差し引くと、売却価格と手取りには差が出ます。さらに、買主が見つかるまで地代や建物の維持費がかかることも忘れずに比べましょう。
| 支出・精算 | 確認事項 |
|---|---|
| 譲渡承諾料 | 地主への支払い、負担者、支払時期 |
| 仲介手数料 | 仲介成約の場合。直接買取なら通常不要 |
| 登記・契約費用 | 建物の登記、売買契約書の印紙税など |
| 住宅ローン | 残債と抵当権抹消等の手続き |
| 譲渡所得税 | 取得費・譲渡費用・特例による |
| 売却までの保有費 | 地代、建物の税金・保険、修繕費など |
税金は「売却額」ではなく譲渡所得から計算する
税務上の基本式は、譲渡収入-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除=課税譲渡所得です。原則として売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超か、5年以下かによって長期・短期が分かれます。借地権と建物で取得時期・取得費の確認が必要になる場合もあります。
居住していた家屋と一緒に借地権を売る場合は、一定の要件を満たせばマイホームの3,000万円特別控除の対象になることがあります。ただし、相続した空き家を売れば自動的にこの特例が使えるわけではありません。売却する人の居住状況や譲渡時期、適用関係を確認してください。
古い借地では、権利金や購入時の契約書が残っていない場合もあります。取得費が不明なら一定の場合に概算取得費を使えますが、実際の取得費を示す資料がないか、先に探してみましょう。売却後の税金がどれくらいになるか心配な方は、売買契約前に税理士へ試算を相談しておくとよいでしょう。
参考:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」、国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」、国税庁「マイホームを売ったときの特例」、国税庁「譲渡費用となるもの」
なお、国税庁の路線価図にある借地権割合は、売買で必ずその割合で売れるという意味ではありません。仲介で売る場合の査定額、買取会社の提示額、税務上の評価額は別のものです。査定額がどう決まるのか気になる方は、こちらも参考にしてください。

借地権の売却はどこに相談する?

借地権を売るときの相談先は、何に困っているかで変わります。売却価格を知りたいのか、地主との話し合いで困っているのか、早めに買い取ってほしいのか。まずは相談したい内容に合う窓口を探しましょう。複数の査定を比べる場合は、どの会社にも同じ借地契約や建物の状態を伝えると、条件の違いが分かりやすくなります。
| 相談先 | まず聞くこと |
|---|---|
| 借地権を扱う仲介会社 | 一般市場での売出価格、想定期間、買主の融資対応 |
| 借地権の専門相談窓口 | 契約書の確認、地主との協議、売却方法の選択 |
| 直接買取会社 | 提示額・価格変更条件・費用負担・引渡し時期 |
| 弁護士・司法書士・税理士 | 承諾拒否の紛争・登記・譲渡税など、それぞれの専門事項 |
借地権そのものや地主との調整も相談したい場合
「地主にどう話せばいいか分からない」「この契約で売却できるのか知りたい」という場合は、借地権を扱う不動産会社に売り方を相談する方法があります。借地権 無料相談ドットコムも、相談先を探す際の選択肢です。対応地域や相談できる範囲、費用が発生する条件は事前に確かめましょう。なお、紛争の代理は弁護士、税務申告は税理士など、相談内容によって窓口は異なります。
専門買取の査定額を比較したい場合
借地・底地や再建築不可などの事情がある物件を早めに手放したい場合は、専門買取も候補になります。ただし、同じ物件でも会社によって提示額や買取条件は異なります。一般仲介で売る場合との価格差だけでなく、最終的な価格が決まる条件や、いつ引き渡せるのかも比べてみましょう。
1都3県の物件について、別の会社の買取条件も見てみたい方は、こちらも比較先の一つです。


そうですね。1社目の査定額だけでは、高いのか安いのか分かりにくいこともあります。
提示額のほかに、地主さんとの調整を誰がするのか、承諾料はどちらが負担するのかまで比べると、売った後に残る金額も見えやすくなりますよ。
まとめ|借地権売却は売り方と手取りを並べて判断

借地権付き住宅を売りたいときは、まず借地契約書や登記、地代の支払い状況を確認しましょう。地主の意向や売却にかけられる時間が分かれば、仲介・地主への売却・直接買取・同時売却のどれを検討するか考えやすくなります。
売買契約を急ぐ前に、譲渡承諾・買主の融資・売買不成立時の費用負担を確かめておくことが大切です。売出価格だけでなく、売れるまでの地代や維持費を差し引いて、手元にいくら残るかまで比べてみてください。
一般の買主を探す方法だけでなく、専門会社による直接買取も考えている方は、提示額と地主への対応、費用負担をまとめて確認しておきましょう。借地・底地などの買取相談先として、次の窓口も選択肢になります。
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※本記事は不動産・法律・税金に関する一般的な情報提供です。個別の借地契約、紛争、登記、税務の判断は、必要に応じて不動産会社・弁護士・司法書士・税理士などへご相談ください。


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