共働きで住宅を購入するとき、選択肢に入りやすいのが「ペアローン」です。
夫婦それぞれの収入をもとに住宅ローンを組めるため、単独ローンでは届かなかった住宅も検討しやすくなります。また、一定の要件を満たせば、それぞれが住宅ローン控除の対象になれるのもメリットです。
一方で、インターネットでは「ペアローンはやめたほうがいい」「組んで後悔した」といった意見も見かけます。
では、ペアローンは本当に避けるべきなのでしょうか。
結論からいうと、ペアローンそのものが危険なのではありません。注意したいのは、2人の収入が今後も変わらないことを前提に、住宅予算を上げすぎてしまうことです。
この記事では、ペアローンの仕組みやメリット・デメリット、収入合算との違い、団信、住宅ローン控除、離婚や持分の注意点まで整理します。
「自分たちはペアローンを使っても大丈夫か」を判断する材料として参考にしてください。
結論|ペアローンをやめたほうがいい人・検討しやすい人
ペアローンは「共働きなら使った方がいい」という住宅ローンではありません。
大きな分かれ目になるのは、2人の収入を使って借入額を増やさないと住宅を維持できないのか、それとも余裕を残したうえでペアローンを使うのかです。
| 慎重に考えたいケース | 検討しやすいケース |
|---|---|
| 2人の現在の収入をほぼ上限まで使わないと返済できない | どちらかの収入が減っても家計に余力がある |
| 購入後に手元資金がほとんど残らない | 購入後も生活防衛資金を残せる |
| 出産・育休・転職などによる収入変化を想定していない | 将来の働き方を夫婦で話し合っている |
| 借入可能額を増やすことがペアローンの主目的 | 無理のない住宅予算を決めたうえで利用する |
| 団信・持分・売却時の扱いを確認していない | 万一の場合まで理解して選んでいる |

共働きなら、とりあえずペアローンというわけではないんですね。

そうですね。「いくら借りられるか」より、「収入が変わっても返していけるか」を先に見たいところです。
そもそもペアローンとは?住宅ローンを2人がそれぞれ契約する仕組み
ペアローンとは、同じ住宅を購入するために、夫婦など2人がそれぞれ住宅ローンを契約する方法です。
たとえば5,000万円を借りる場合、
- 夫:3,000万円
- 妻:2,000万円
というように、それぞれが自分の住宅ローンの債務者になります。
「2人で5,000万円のローンを1本組む」のではなく、「3,000万円と2,000万円のローンを2本組む」と考えると分かりやすいでしょう。
金融機関によって細かな条件は異なり、互いに相手方のローンの連帯保証人となる商品もあります。
この「ローンが2本になる」という特徴が、ペアローンのメリットにも注意点にもつながっています。
ペアローン・収入合算・単独ローンの違い
夫婦で住宅ローンを検討するときは、ペアローンだけでなく「収入合算」も候補になります。
特に大きな違いは、住宅ローンを1本契約するのか、それぞれ1本ずつ契約するのかです。
| 比較項目 | 単独ローン | ペアローン | 収入合算(連帯保証型の例) |
|---|---|---|---|
| ローン契約 | 1本 | 2本 | 1本 |
| 債務者 | 1人 | 2人それぞれ | 申込者1人 |
| 審査に使う収入 | 原則1人 | それぞれの収入 | 2人の収入を合算 |
| 団信 | 債務者が加入 | 原則それぞれ加入 | 主債務者のみの商品が一般的 |
| 住宅ローン控除 | 本人 | 要件を満たせばそれぞれ | 契約方式によって異なる |
| ローン契約に伴う費用 | 1本分 | 2本分発生する項目がある | 1本分 |
なお、収入合算には「連帯保証型」と「連帯債務型」があり、団信や住宅ローン控除の扱いも同じではありません。
そのため、「ペアローンをやめる=単独ローンしかない」わけではありません。収入合算を含めて比較することで、家計に合う借り方が見つかる場合もあります。
ペアローンはなぜ「やめたほうがいい」と言われる?6つの注意点
ペアローンにはメリットがあります。それでも慎重な意見が多いのは、住宅購入時には見えにくいリスクがあるためです。
1.借入可能額が増えて住宅予算を上げすぎやすい
ペアローンでは2人それぞれの収入を使って審査を受けるため、単独ローンより大きな借入額を検討できる場合があります。
これはメリットでもありますが、FPの視点では特に注意したい部分です。
借りられる金額が増えることと、無理なく返せる金額が増えることは同じではありません。
たとえば単独ローンでは4,000万円、ペアローンなら5,500万円を借りられるとしても、家計に1,500万円分の余裕が生まれたわけではありません。
住宅価格が上がれば、住宅ローンだけでなく、固定資産税や火災保険、将来の修繕費なども増える可能性があります。
先に借入可能額を確認して物件価格を決めるのではなく、家計から無理のない住宅予算を決め、その範囲でローンを選ぶ方が安全です。
2.どちらかの収入が減ると返済計画が崩れやすい
住宅ローンは数十年にわたる返済になることが多く、その間ずっと現在と同じ収入が続くとは限りません。
たとえば、
- 出産・育児による休業や時短勤務
- 転職
- 病気や休職
- 介護
- 働き方の変更
などで、世帯収入が一時的または長期的に下がることがあります。
共働きであること自体が問題なのではありません。怖いのは、2人が現在の収入を維持し続けなければ返済できない金額まで借りてしまうことです。
3.一般的な団信では相手の住宅ローンは残る
ペアローンでは、それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入する商品が一般的です。
たとえば、
- 夫の住宅ローン残高:3,000万円
- 妻の住宅ローン残高:2,000万円
という状況で夫が団信の支払事由に該当した場合、一般的な仕組みでは夫の3,000万円は完済されても、妻の2,000万円は残ります。
「どちらかに万一のことがあれば、住宅ローンがすべてなくなる」と思っていると、想定と違う結果になりかねません。
一方で、どちらか一方に万一のことがあった場合に、2人分の残高を保障する連生型のペアローン団信を用意している金融機関もあります。
金利だけでなく、誰に何が起きたとき、どこまで住宅ローンが保障されるのかまで見て比較しましょう。
4.ローンが2本になるため諸費用が増えることがある
ペアローンでは住宅ローン契約が2本になるため、事務手数料など、契約ごとに発生する費用がそれぞれ必要になる場合があります。
単独ローンやローン契約が1本の収入合算と比べると、諸費用が増える可能性がある点は見落としやすいところです。
「住宅ローン控除を2人で使えるか」だけを見るのではなく、契約時の費用まで含めた総額で比較してください。
5.離婚すると住宅とローンを同時に整理する必要がある
ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する場合、住宅と2本の住宅ローンをどうするか決める必要があります。
主な選択肢は、住宅を売却してローンを返済する方法か、どちらか一方が住宅を取得し、ローンの一本化や借り換えを検討する方法です。
売却価格で住宅ローンを完済できれば整理しやすいものの、売却価格より残高が多い場合は、不足分を自己資金などで補わなければ売却できないケースがあります。
一方が住み続ける場合も、夫婦間で「今後は夫だけが払う」などと決めただけで住宅ローン契約が変わるわけではありません。
一本化や借り換えには金融機関の審査が必要で、1人の収入では希望どおり変更できないこともあります。
6.資金負担と登記持分がずれると贈与税の問題が生じることがある
ペアローンを利用するときは、住宅ローンだけでなく住宅の所有持分にも注意が必要です。
たとえば5,000万円の住宅について、頭金や住宅ローンを含め、
- 夫:4,000万円を負担
- 妻:1,000万円を負担
したにもかかわらず、登記上の持分を単純に「夫1/2・妻1/2」とすると、実際の資金負担割合とのズレが生じます。
国税庁では、住宅購入時の実際の資金負担割合と所有権の登記持分が異なる場合、夫婦間の贈与として贈与税の問題が生じることがあるとしています。

夫婦だから、とりあえず持分を半分ずつにすればいいわけではないんですね。

そうです。頭金も含めて、誰がいくら負担するのかを整理してから持分を決めましょう。
それでもペアローンを選ぶメリット
注意点が多いからといって、ペアローンを一律に避ける必要はありません。
住宅予算に余裕を持ち、仕組みを理解して使えば、共働き世帯にとって合理的な選択になることもあります。
単独ローンより住宅購入の選択肢を広げやすい
2人それぞれの収入を使って住宅ローンを組むため、単独ローンより大きな資金を用意できる場合があります。
希望するエリアや必要な住宅性能を確保するために少し借入額を増やしたいケースなどでは、選択肢を広げる方法の一つになります。
ただし、これは「借りられる限度額まで借りた方がいい」という意味ではありません。
要件を満たせばそれぞれ住宅ローン控除の対象になれる
ペアローンでは2人それぞれが住宅ローンの債務者になるため、適用要件を満たせば、それぞれが住宅ローン控除の対象になれる場合があります。
ただし、「2人で使える=必ず控除額が2倍になる」わけではありません。
実際に控除できる金額は、それぞれの住宅ローン残高や納めている税額、住宅側の要件などによって変わります。
住宅ローン控除はメリットの一つですが、「控除を受けるために借入額を増やす」という順番にはしない方がよいでしょう。
それぞれ異なる返済条件を選べる商品もある
金融機関によっては、夫婦それぞれが異なる金利タイプや返済期間を選択できるペアローンがあります。
たとえば、一方を変動金利、もう一方を固定金利にするなど、世帯全体で金利リスクを分散する考え方もできます。
その反面、住宅ローンが2本になるため、毎月の返済額や残高を夫婦で共有しておくことが欠かせません。
ペアローンで後悔につながりやすい3つの決め方
ペアローンで後悔するかどうかは、ローン方式そのものより「どういう基準で決めたか」に左右される部分が大きいです。
1.借入可能額をそのまま住宅予算にする
住宅ローン審査で提示された借入可能額を、そのまま「買っても大丈夫な住宅価格」と考えるのは避けたいところです。
金融機関の審査が、各家庭の教育費、老後資金、車、旅行、趣味など将来の支出まで細かく判断してくれるわけではありません。
住宅ローン審査に通るかではなく、住宅購入後も今までどおり貯蓄できるかまで確認して住宅予算を決めましょう。
2.現在の世帯年収だけで返済計画を作る
夫婦ともフルタイムで働いている現在の年収だけを前提にすると、育休、時短勤務、転職などで収入が変わったときに余裕がなくなる可能性があります。
特にこれから出産や働き方の変更を考えている家庭では、住宅購入前に「どちらがどのくらい働く予定なのか」まで話しておいた方が現実的です。
3.住宅ローン控除のお得さを優先して決める
住宅ローン控除は家計にとってメリットですが、住宅ローンそのものは長期間返済していく負債です。
控除を受けられるからと借入額を増やし、結果として毎月の返済負担や支払利息が大きくなれば、本末転倒になることもあります。
税制上のメリットは、無理のない借入額を決めた後に確認するくらいの順番がよいでしょう。
FP視点|年収ではなく「収入が減った後の家計」で考える
ペアローンを検討するときに、FPの視点から特に確認したいのは、現在の世帯年収より条件が悪くなったときにも家計を維持できるかです。
「どちらか1人の収入だけですべて返せなければ危険」とまで考える必要はありません。
それより、現実に起こりそうな変化をいくつか当てはめてみる方が役立ちます。
| 想定するケース | 確認したいこと |
|---|---|
| 育休・時短勤務 | 収入が減った期間も返済と生活費をまかなえるか |
| 転職 | 一時的な収入減や賞与減があっても貯蓄を取り崩しすぎないか |
| 病気・休職 | 手元資金で何か月家計を維持できるか |
| 金利上昇 | 返済額が増えても毎月の貯蓄を続けられるか |
| 教育費の増加 | 住宅ローン返済と教育費が重なる時期にも余裕があるか |
ここでは額面の年収より、実際に毎月使える手取り収入で考えるのがポイントです。
毎月の返済をボーナスがなければ維持できない計画より、通常月の手取りだけでも生活費・住宅ローン・一定の貯蓄を確保できる方が、収入変化には対応しやすくなります。
ペアローンを使った結果、購入できる住宅価格が上がったとしても、毎月ほとんどお金が残らないのであれば余裕のある住宅購入とはいえません。
「返済できるか」だけでなく、「返済しながら貯蓄を続けられるか」まで見て判断しましょう。
宅建士視点|ペアローンでは持分・売却・契約関係も確認する
ペアローンでは金利や審査だけでなく、不動産そのものの権利関係も確認しておきたいところです。
頭金・借入額と登記持分を整理する
夫婦で住宅を購入する場合は、誰が頭金を出し、誰がいくら住宅ローンを負担するのかを整理したうえで登記持分を決めます。
実際の購入資金の負担割合と登記持分が大きく異なると、夫婦間の贈与として扱われる可能性があります。
「夫婦だから半分ずつ」と感覚で決めず、頭金を含めた実際の資金負担と持分が合っているかを確認してください。
共有名義の住宅全体を売るには夫婦双方の協力が必要
夫婦の共有名義になっている住宅を将来売却する場合、住宅全体の売却は一方だけの判断で進めるものではありません。
夫婦関係が良好なときには問題になりにくいものの、離婚などで売却方針が一致しないと、不動産の処分が複雑になることがあります。
ペアローンを検討するときは「買うとき」だけでなく、将来売る可能性まで含めて共有名義を考える視点も持っておきましょう。
夫婦間の取り決めと金融機関との契約は別
離婚時に夫婦間で「これからは夫だけが返済する」「妻は住宅から出る」と決めても、それだけで金融機関との契約内容が変わるわけではありません。
ペアローンの一本化や借り換えには金融機関の審査や手続きが必要です。
つまり、夫婦間で決めたことと、金融機関に対する返済義務は分けて考える必要があります。
将来簡単に一本化できることを前提に、現在のペアローンを組むのは避けた方がよいでしょう。
ペアローンを組む前に夫婦で確認したいチェックリスト
ここまで読んでペアローンを候補に残すなら、契約前に次の項目を2人で確認してみてください。
- なぜペアローンを選ぶのか説明できる
- 単独ローンと収入合算も比較した
- 借入可能額ではなく家計から住宅予算を決めた
- 片方の収入が減った場合も試算した
- 住宅購入後も生活防衛資金を残せる
- ボーナスを前提にしなくても毎月返済できる
- 団信で誰のローンがどこまで保障されるか理解している
- 住宅ローン控除だけを理由に借入額を増やしていない
- ローン2本分の諸費用を確認した
- 頭金・借入額と登記持分を確認した
- 将来売却するときのことも話し合った
すべてに理想的な答えを出せる必要はありません。
ただし、答えられない項目が多い状態で「2人ならもっと借りられるから」という理由だけでペアローンを選ぶのであれば、一度住宅予算から見直した方が安心です。
ペアローンに関するよくある質問
ペアローンは本当にやめたほうがいいですか?
一律にやめた方がいい住宅ローンではありません。
注意したいのは、2人の収入を使えることで住宅予算を上げすぎてしまうケースです。
収入が減った場合にも家計に余力があり、ペアローンを選ぶ理由を夫婦で共有できているなら、有力な選択肢になります。
ペアローンと収入合算はどちらがおすすめですか?
家庭や利用する商品によって異なります。
ペアローンは住宅ローンを2本契約するため、それぞれが住宅ローン控除や団信の対象になれる可能性がある一方、契約に伴う費用や管理も増えます。
収入合算はローンを1本にできる方式がありますが、連帯保証型と連帯債務型では住宅ローン控除や団信の扱いも異なります。
借入可能額だけでなく、団信・税制・諸費用・返済方法まで並べて比較してください。
ペアローンなら住宅ローン控除は2倍になりますか?
必ず2倍になるわけではありません。
ペアローンでは、適用要件を満たせばそれぞれ住宅ローン控除の対象になる可能性がありますが、実際の控除額はそれぞれの借入額や税額、住宅の要件などによって変わります。
税制は変更されることもあるため、住宅を購入する時点の適用条件も確認してください。
片方が仕事を辞めたらどうなりますか?
仕事を辞めても住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。
そのため、退職だけでなく育休、時短勤務、転職なども含め、片方の収入が減った場合にも返済を続けられる借入額にしておくことが重要です。
ペアローンは後から1本にできますか?
一本化できるケースはありますが、自由に変更できるわけではありません。
借り換えなどによって一本化する場合には、金融機関による新たな審査が必要になることがあります。
「将来必要になったら簡単に1本にすればいい」と考えてペアローンを組むのは避けた方がよいでしょう。
ペアローンでは持分を半分ずつにすればいいですか?
必ずしも半分ずつが適切とは限りません。
頭金と住宅ローンを含め、実際に夫婦それぞれが負担する購入資金と登記持分が大きくずれると、贈与税の問題が生じる可能性があります。
住宅購入前に、誰がいくら負担するのかと登記持分をセットで整理してください。
まとめ|ペアローンは「2人ならいくら借りられるか」で決めない
ペアローンは、夫婦など2人がそれぞれ住宅ローンを契約し、2人の収入を住宅購入に活用できる方法です。
単独ローンより住宅購入の選択肢を広げやすく、一定の要件を満たせばそれぞれ住宅ローン控除の対象になれるなどのメリットがあります。
一方で、住宅ローンが2本になるため、収入減、団信、諸費用、離婚時の整理、共有持分など、事前に考えておきたいことも増えます。
ペアローンを検討するときに最初に考えたいのは、
「2人ならいくら借りられるか」ではなく、「収入や生活が変わっても、この住宅を無理なく維持できるか」
です。
住宅会社や金融機関からペアローンを提案されても、その場で決める必要はありません。
単独ローンや収入合算も並べ、住宅価格、毎月の手取り、団信、諸費用、将来の働き方、持分まで確認したうえで、自分たちに合う借り方を選びましょう。
ペアローンは借入額を増やすためだけに使えば家計のリスクも大きくなります。一方、住宅予算に余裕を持ち、将来の変化まで考えて利用するなら、共働き世帯にとって有効な選択肢の一つです。

コメント